カウンターインテリジェンス 防諜機関
多くの国の政府は情報機関と防諜機関を分けて組織しており、防諜機関はアメリカの連邦捜査局(FBI)や日本の公安警察のように、警察の一部門として組織されている場合が多い。
また、イギリスの防諜機関である内務省公安部(MI5)は直接的な捜査権を持っていないが、捜査権のあるロンドン警視庁公安部(Special Branch)と呼ばれる公安警察と緊密に協力している。
ロシアの主な防諜機関は、ソビエト連邦期の国家保安委員会(KGB)の第2本部および第3本部が前身である連邦公安庁(FSB)である。

カナダは王立カナダ騎馬警察の公安警察が諜報活動と防諜活動を一手に担当していたが、1984年にカナダ公安情報部(CSIS)が発足して諜報活動を担うようになり、諜報と防諜が分離した。
フランスでは、国内におけるテロ対策を警察機関の枠組みのなかに作りあげている。
テロ対策担当の予審判事は、アメリカとイギリスにおける捜査官、検察官、裁判官の機能を併せ持つ複数の機能を担っている。テロ対策担当予審判事は、防諜機関の国土監視局(DST)や情報機関の対外治安総局(DGSE)から協力を要請され、ともに活動することもある。

スペインでは、内務省が軍の支援を受けながら国内におけるテロ対策を担当している。外国からの防諜活動は、国家情報本部(CNI)が責任を負っている。2004年3月11日のマドリード列車爆破テロ事件の発生後、内務省と国家情報本部との連携で問題があったことが発覚し、国家テロ対策本部が創設された。スペインのテロ事件調査委員会は、この本部を作戦の調整のためだけでなく、情報収集のためにも活用することを提言している。

防諜活動の内容も攻撃的なものと防御的なものに分類される場合もある。アメリカの中央情報局(CIA)の国家秘密本部(NCS)は攻撃的カウンターインテリジェンスを担当するのに対し、国務省の外交保全局(DSS)は、アメリカの在外公館(大使館・総領事館)において、人と情報の保護に携わる防御的カウンターインテリジェンスを担当する。
防諜活動という用語は、現実的には諜報活動に対抗するものを指すとされるが、攻撃的カウンターインテリジェンスには諜報活動が含まれるため、ここでは広義の意味で捉えられることを避けるために使われている。

主な防諜機関
日本
警察庁警備局(公安警察) 警視庁公安部 道府県警察本部警備部 警察署警備課
自衛隊 情報保全隊

米国 連邦捜査局(FBI)国家公安部
英国 内務省公安部(MI5、正式にはSS)
ロシア ロシア連邦公安庁(FSB)
イスラエル イスラエル公安庁 シャバック(שב"כ)
フランス フランス国土監視局(DST)
ドイツ 連邦憲法擁護庁(Bfv)

防御的カウンターインテリジェンス
防御的カウンターインテリジェンスは、その組織自体の脆弱性を探すための実践的な訓練であり、そして、リスクと利益に注意を払いながら、弱点の発見に近づいていく。
防御的CIは、外国の諜報活動(FIS)によって発見されやすい、組織の中で脆弱な場所を探すことから始まる。FISはカウンターインテリジェンス・コミュニティによる造語であり、そして、今日の世界では、「外国」とはすなわち「対立するもの」と置き換えられる。対立するものは実際に国家であるかもしれないが、国境を超える集団または国内の反乱者の集団であることもある。FISに対抗する作戦は、自国や友好国の安全を脅かす集団に対抗するためのものである可能性もある。友好国の政府を支援するためになされる活動の範囲は、幅広い機能を含むこともあり、軍事支援や防諜活動だけでなく、人道支援や開発援助(例えば国家の建設)もその範囲に含まれる。

ここで使われている用語は、まだ定義が定まっていないものもあるが、「国境を超える集団」にはテロリスト集団だけでなく、国境を超える犯罪組織も含まれる。国境を越える犯罪組織には麻薬取引、資金洗浄、サイバーテロ、密輸を行う集団などが含まれる。
「反乱者」とは、その国の政府によって犯罪組織または軍事組織と認識されている政府に対立する集団である場合や、自国や友好国の政府に対する秘密の諜報活動や秘密作戦を行っている疑いのある集団であることもある。

カウンターインテリジェンスとカウンターテロリズムは、外国の諜報機関やテロリスト集団に対する戦略的な評価や、現在進行中の作戦や捜査への戦術的なオプションの準備を提供すると分析されている。カウンターエスピオナージには、二重スパイ、欺騙、または外国の諜報機関の職員をリクルートすることなどの外国の諜報活動に対する積極的な行動も含まれる。秘密のヒューミントの人的資源は、敵の思考に対して最大の洞察を与えるが、それらはまた、敵の攻撃においてその組織の最も脆弱なものとなりうる。敵のエージェントを信用する前に、そのような人物が自国で信用されているかどうかを疑ってから始めることを忘れてはならない。彼らはその国に未だに忠誠を誓っているかもしれないからである。

攻撃的カウンターインテリジェンス
攻撃的カウンターインテリジェンスは、発見した外国の諜報活動を行う人物を無力化し、逮捕するか、あるいはその人物が外交官である場合には、ペルソナ・ノン・グラータを宣言することによって国外退去を命じる、最小限の、一連の技法である。
ワイズナーは彼自身によって、そしてダレスもまた、外国からの攻撃、勢力の浸透、または諜報活動に対する最善の防御の方法は、それらの敵意のある活動に対して積極的な方法をとることであると強調した。
これはしばしばカウンターエスピオナージと呼ばれる方法であり、敵による諜報活動または友好国に対する諜報活動への物理的な攻撃を検知し、損害を与えることや情報の損失を防ぎ、可能であるならば反撃を行うことである。カウンターエスピオナージは敵に対抗するために行われるものだけでなく、外国の諜報機関のエージェントをリクルートすることや、実際に自身の活動に忠誠を誓っている人物を疑うこと、敵の諜報活動にとって有益なリソースを取り除くことにより、敵の諜報活動を撃退しようと積極的に試みるものである。これらのすべての行為は、国家による組織だけでなく非国家的な脅威にも適用される。
もし自国で、あるいは友好国で敵意のある行為が行われた場合には、警察による協力を通じて、敵のエージェントは逮捕されるか、あるいはその人物が外交官である場合には、ペルソナ・ノン・グラータが宣言される。諜報活動の観点からは、逮捕または脅威を取り除くための行為のために、ある側にとって有利となる状況を利用することは、通常好ましいことである。諜報活動の優先権は、特に外国の脅威と自国民とともに活動する外国人が重なる場合、時として法執行機関の本来の役割と抵触することがある。
囚人に協力する選択する手段が与えられている場合、または深刻な状況に直面している場合、そしてスパイ活動によって死刑が言い渡されている場合を含むいくつかの状況では、最初の手順として逮捕という措置が取られる。
Cooperation may consist of telling all one knows about the other service, but, preferably, actively assisting in deceptive actions against the hostile service.

防諜による諜報活動の安全の確保
防御的カウンターインテリジェンスでは、特に諜報活動を行う際の、文化、源泉、手段と資源におけるリスクの分析が行われる。効果的な諜報活動はしばしばリスクを負って行われるものであるため、リスク管理はそれらの分析に常に反映されなければならない。リスクを計算に入れている場合でさえ、適切な対応策を取り入れることによって活動のリスクを軽減する必要がある。

FISは特に開かれた社会、また、その環境において開拓していくことができ、インテリジェンス・コミュニティーを崩壊させるために内部の人物と接触してきた。攻撃的カウンターエスピオナージは侵入者を見つけ、無力化するための最も強力な手法であるが、それが唯一の手段ではない。何が個人を所属している側から転向させるのかについて理解することが囚人プロジェクトの目的である。個人のプライバシーを侵害することなく、特に情報システムの利用における、異常な振る舞いを見つけるためのシステムを開発することは可能である。

「意思決定者は敵の諜報機関による管理または操作から自由であることが求められる。なぜならすべての諜報機関のディシプリンは我々と対峙する勢力を操作することを目的としているからであり、すべての情報の収集の目的と原則から諜報活動の信頼性を有効なものにすることは必要不可欠である。従って、各々の諜報機関は、防諜の任務に関連する源泉と方法の信頼性を普遍的な標準に従って有効化しなければならない。他の任務の分野では、我々は情報を収集、分析して実践と他の諜報活動に普及させ、改善、最善の方法、普遍的な標準を推進する」。
 
諜報活動は国外だけでなく国内の脅威からも攻撃を受けやすい。それは転覆、背信、脆弱性、政府と企業の秘密、そして諜報活動の情報源と方法のリークなどによってである。この内部の脅威は、オルドリッチ・エイムズ、ロバート・ハンセン、エドワード・リー・ハワードなどの主な秘密活動にアクセスすることができた人物により、アメリカの国家の安全保障に甚大な被害を与えてきた。防諜に関するファイルを閲覧する際の異常な行動を検知する電子システムを導入していれば、ロバート・ハンセンのソビエト(後のロシア)から報酬を受け取っていたことへの容疑による捜査はもっと早く表面化していたかもしれなかった。異常は、単純に特に独創的な分析官が訓練された直観によって関係があると感じ、それらについて調査しようとすることによって現れる。

これらの新たなツールと技術が「国家の造兵廠」に加わったことにより、カウンターインテリジェンス・コミュニティは外国のスパイの操作、積極的な捜査の指揮、逮捕または、外交官が関わる場合には、彼らが実際の外交上の地位と矛盾したことを行ったように関連付けて国外に追放するか、または欺くために彼らを無意識のうちに経路として利用するか、または彼らを二重スパイに仕立てようとする。
「気づいている(Witting)」とは諜報活動の神髄を示した用語であり、事実または情報の断片への気づきだけでなく、その諜報活動に対する関連性への気づきをも示している。
ヴィクトル・スヴォーロフは、かつてのソビエト軍の諜報機関(つまりソビエト連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の偽名の工作員であるが、彼はヒューミントの工作員が亡命することは、亡命のために離反を始めようとする工作員または志願して国を後にしようとする者にとって特別な脅威となると主張した。「温かく迎えられた」志願者は、彼らが敵の諜報員から軽蔑されているという事実を考慮していない。
「共産主義の醜い側面を非常に多く見てきたソビエトの諜報員は、同胞を喜んで売り渡す者に対して最大限の反感を持つことが非常に多い。そしてGRUまたはKGBの職員が、彼が所属している犯罪的な組織との関係を断とうと決断したとき、何かの幸運がよく起こり、彼が真っ先に行うのは、その嫌悪すべき志願者について暴露しようとすることである」。

防諜部隊防護活動
軍事、外交およびその関連施設に対する攻撃は、1983年にベイルートで行われたフランスとアメリカの平和維持軍に対する攻撃や、1996年のサウジアラビアのアル・コバール・タワーに対する攻撃、1998年のコロンビアとケニアで行われた基地や大使館に対する攻撃、2000年にケニアで行われたアメリカ海軍のミサイル駆逐艦コールに対する攻撃など、実際に起こりうる本当の脅威である。アメリカ軍を保護する方法は、軍人やその家族、資源、施設と機密情報に対して行われる一連の活動に向けられるものであり、そしてほとんどの国はそれらの施設を保護するために同じようなドクトリンを持っており、また起こりうる攻撃に対して注意深く備えている。部隊防護は偶然または自然災害によらない、故意の攻撃からの防護と定義される。

防諜部隊防護活動(CFSO)は海外において人的資源を活用して行われる作戦であり、通常は秘密裏に行われ、国内とのセキュリティのレベルのギャップを埋めるとともに、諜報活動を行う際に指揮官からの諜報員への要求を満たすことが目的である。
地元の人々と交流している軍警察やパトロール隊は、防諜のためのヒューミントの資源としては本当に価値があるかもしれないが、彼ら自身が防諜部隊防護活動を行うことはない。グレッグホーンは国家の諜報機関の諜報員の保護と、敵を撃退するための軍隊を提供したり、部隊防護のための情報の提供が諜報機関に必要とされることを区別している。ヒューミントの資源は、本当にヒューミントとして利用するかもしれないが、特に防諜と関連があるわけではい外国人との混同を防ぐ軍の偵察パトロール隊など他にもある。
部隊防護、諜報機関の活動、または国家の安全保障にとって重要な施設の保護に用いられるアクティブ・カウンターメジャーは、ヒューミントのディシプリンと関わりがあるが、外国のエージェントを発見するための非正規、臨時のあるいは付随した資源と呼ばれる人的資源からの情報、例えば、

政治亡命のために離反を始めようとする情報機関に志願して採用された者

気づいていない人的資源(防諜にとって有益な情報を提供し、漏洩の過程にあるそのような情報が、審査で彼らに有利に働いているとは知らないかもしれない、すべての個人)
発見され捕虜となった者

難民と国外追放者

審査中に接触を受け、面接を受けた者

公式の連絡係から受け取った情報の選別と報告を行う。

 
『物理的セキュリティは重要である、しかしそれが部隊防護活動の役割に優先することはない...すべての諜報機関のディシプリンは部隊防護活動のための情報を収集するために利用され、諜報活動と諜報機関によって収集されたヒューミントの情報は、テロリストや部隊防護の他の脅威の示唆と警告を与える際に重要な役割を果たす』。
 
現地国に展開する軍への部隊防護は、任務の遂行中や、宿泊先においてさえ、国家レベルのテロ防護組織による十分な支援を受けていないかもしれない。ある国において、すべての活動の、軍事支援や顧問団とともに、部隊防護防諜活動の人員とともに活動することにより、現地国の法執行機関と諜報機関との関係を築き、地域の環境について理解し、言語能力を改善することが可能になる。部隊防護防諜活動による国内のテロリズムの脅威への取り組みのためには、その国における法的な能力の問題を解決することが必要となる。

コバール・タワーへのテロ攻撃におけるテロリストの計画が教訓となり、長期間にわたる部隊防護防諜活動の必要性が明らかとなった。『ヒズボラのスパイたちは、この攻撃のための情報の収集と計画の活動が1993年に開始したと考えられていた。彼らは1994年の秋にアメリカ軍の軍人がコバール・タワーに宿泊していたことを認識し、施設の下見を開始し、テロの計画を立てるため1995年の6月まで継続した。
1996年3月、サウジアラビアの国境警備隊がプラスチック爆弾を持ち込もうとしたヒズボラのメンバーを逮捕し、2人のヒズボラのメンバーのさらなる逮捕につながった。ヒズボラの指導者はそれらの逮捕により、代わりの人材をリクルートし、テロの計画を継続した』。
 
防御的カウンターインテリジェンスの任務
アメリカのドクトリンでは、他の国のそれでは必ずしも必要不可欠なものではないが、CIは外国の諜報活動によるヒューミントに対抗するための基本的な手段である。1995年のアメリカ陸軍のカウンターインテリジェンスのマニュアルでは、CIは様々な情報収集のディシプリンに幅広く焦点を当てている。CIのタスクの全体の一部を紹介すると、CIの関心事となる組織、場所、そして個人について発展、維持、そして複数のディシプリンに基づいた脅威となるデータとインテリジェンスに関する情報の収集を進めること。これには、反乱者やテロリストの下部組織やCIの任務を支援することができる個人が含まれる。

すべての分野のセキュリティに携わる人員に対して教育を施すこと。この内容は脅威に関する複数のディシプリンについてのブリーフィングである。
ブリーフィングの焦点と機密種別のレベルは調整することができるし、されなければならない、Briefings could then be used to familiarize supported commands with the nature of the multidiscipline threat posed against the command or activity.
より最近のアメリカ軍が使用しているインテリジェンスのドクトリンは、その基本的な対象を、通常カウンターテロリズムを含む、カウンター・ヒューミントにだけ向けるよう厳しく制限されている。
軍事または他のリソースに対する脅威に関するすべての情報収集活動について、誰が責任を負うのか、このドクトリンのもとでは必ずしも明確ではない。アメリカ軍のカウンターインテリジェンスのドクトリンの総覧については、統合作戦を支援するためのカウンターインテリジェンスとヒューマンインテリジェンス(Joint Publication (JP) 2-01.2, Counterintelligence and Human Intelligence Support to Joint Operations)として資料が公開されている。
情報収集活動のディシプリンに対するより特定の対抗手段は以下の通りである。
情報収集のディシプリンに対するCIの役割(1995年のドクトリン)
ディシプリン
攻撃的CI
防御的CI
ヒューミント 対偵察、攻撃的カウンターエスピオナージ
作戦の安全を確保するための欺騙
シギント
運動エネルギーおよび電子攻撃の推奨 安全な電話、暗号、欺騙を用いた無線の運用セキュリティ
イミント
運動エネルギーおよび電子攻撃の推奨 欺騙、運用セキュリティの対抗手段、欺騙(おとり、カモフラージュ)、可能であるならば、隠れたり活動を中止して上空の衛星からのレポートを利用する。

記事ウィキぺデア https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%B2%E8%AB%9C