山本耀司 高橋幸宏 スペシャル対談

WORLD HAPPINESS 2015のメイン・ビジュアルを手がけたのは、デザイナーの山本耀司さん。その愛犬をモチーフにした素敵なビジュアルが生まれました。本フェスのキュレーションをつとめる高橋幸宏とともに、どのようにしてこのビジュアルの実現に至ったか、うかがいました。 もちろん、今回の主役、凛ちゃんも一緒です。
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──WORLD HAPPINESSは、年ごとに毎回さまざまなアーティストの方がメイン・ビジュアルを担当されてきましたが、今回は幸宏さんにとっての長年の畏友でもある山本耀司さんが担当されることとなりました。

山本耀司(以下、山本)
いよいよ頼む相手がいなくなったんだなと(笑)。

高橋幸宏(以下、高橋)

耀司さんにお願いしちゃったら、この次は誰に頼めばいいのかっていうモンダイはありますね(笑)。

高橋 去年が横尾さん(横尾忠則/WH2014メイン・ビジュアル)で。

山本 そうしたら耀司さんしかいないなって。横尾さんの次に若手を持ってくるのもかわいそうだろうっていう(笑)。

──
そういった思いもあったんですね(笑)。これまでのメイン・ビジュアルはすべてイラストでしたが、初の写真ということで、最初に見た時のインパクトはいつも以上に強烈でしたね。
高橋 嬉しい裏切られ方っていうかね。毎回、アーティストの皆さんには、どんなフェスかっていう説明をするだけで、あとはおまかせ。

「こういうものを作ってほしい」といった具体的なリクエストは一切しないんですけど、耀司さんにも今までと同じような感じでお願いしたんです。
で、出てきたのが凛ちゃん(耀司さんの愛犬)が正面に座ったこの写真のビジュアル。おお、なるほど!って感じで。可愛いんだけど、これまでにないお洒落感でね。たしかに、これまでの一連のビジュアルの中では浮くくらいに際立つものがある。
凛の背後のパネルに映っているのは、結構有名なトップモデルたちですよね?

山本 あのモデルたちの写真は、レスリー・キー(この取材時の撮影も担当)で、このビジュアルを撮ったのが、レスリーの友達のライアン・チャンだから。高橋基本はカラーだけど、モノクロに変換しても耀司さんぽくってカッコいい。小さくリサイズしても充分にインパクトありますしね。
──加えて、耀司さん手書きのロゴも登場しました。

高橋 どうしても耀司さんの手書きのものもほしかったんで、一緒に食事に行ったときに「一筆書いてほしい」とお願いしたんですよ。こっそり紙とペンや鉛筆を用意しておいて(笑)。「とっ払いで三千円くらいくれる?」と訊かれたので、「ワイン一杯つけましょう」と答えて(笑)。
昔、耀司さんと一緒に仕事をした時に、打合せの席で「今度はどういう感じですか」なんて訊くと、ササッとスケッチを書いて「こういう感じでやろうか」って見せてくれる。その走り書きのようなスケッチがいちいち良くって。「もらって帰りたいなあ」と思っていたんですが、やっと夢が叶いました。とにかく、写真もロゴも例年にも増してお洒落になりましたね。ロゴ

──
今回のWORLD HAPPINESSのビジュアルに耀司さんが込めた思いやコンセプトみたいなものはあるんですか?

山本 いや、なにもないです(笑)。パリコレに出たモデルたちが写ったパネルの前にたまたま凛が立ったところを撮ったっていう偶然の産物なんです。こういうのは狙ってできるもんじゃないんで。でも、ものづくりって、偶然できたものがいつもカッコいいんです。

──
てっきり、WORLD HAPPINESSという言葉をイメージして撮影されたビジュアルだと思ってました。

山本 でも、ハッピーでしょ?高橋最初から凛ちゃんを今回のWORLD HAPPINESSのビジュアルに使おうというわけではなかったんだ。

山本 それは全然なくて、僕の右腕の久保っていうスタッフが、「こんな写真ありますよ」って見せてくれたのがこの写真で、「え、いいじゃないか!」と。そういう感じです。ちょうど幸宏からWORLD HAPPINESSのビジュアルを頼まれた直後にそういう偶然があったんで。ちょっと無責任ですけど、考え込んで作るよりもいいんじゃないかっていう。

──
奇跡的にハッピーな瞬間が写真として切り取られた感じがしますね。幸宏さんがおっしゃるように、おしゃれな空気の中に凛ちゃんがいることで、WORLD HAPPINESSのテーマのひとつでもあるファミリー感も見事に出てますよね。

高橋 そうそう。ファミリー感や、WORLD HAPPINESSが持つ、ちょっとほんわかとした雰囲気がちゃんと残ってます。耀司さんは何も考えてないって言ってますけど、……うん、たぶん考えてなかったんだと思いますけど(笑)、出てきたものはバッチリ。ライブやフェスって、本当に偶然の連続、そういうカタマリみたいなものだから、その意味でもぴったりなのかなと思いますね。今回のビジュアルで、WORLD HAPPINESSに、また違う方向性というものをつけ加えてもらったかなっていう気がしてます。凛

──
耀司さんと幸宏さんは、知り合ってもう40年近くになるそうですが。

高橋 知り合ってからはそのくらいになりますね。僕が洋服をやってた頃、まだ耀司さんは男物はやってなくて、たまに僕の店に買いに来てくれたりってこともあったんですけど、急速に親しくなったのは80年代の後半からですかね。仕事を終えた後、夜な夜な飲み歩いてた頃、耀司さんも飲み歩いてて、偶然西麻布店で会ったんです。そこで「あ、久しぶり! 今度パリコレの音楽やってくれない」って言われて「いいっすよ」って言ったら、次の日すぐに耀司さんの会社から正式な依頼の電話がかかってきて(笑)。選曲じゃなくて、オリジナルで作ってくれないかってことで、そこから三年ぐらいの間、一緒にやらせてもらいました。
それで僕は洋服を辞める決心をしたんです。こういう服を作る人がいるんだったら、僕がやる必要はないなって。で、コレクションをお手伝いするようになって、曲を作って「どうだ!」っていう思いで持っていくでしょ。完璧だろ、なんて思いながらね。でも、「すごいイイねえ」と言ってもらえたと思ったら、「これ、音のチャンネルを全部バラバラにしてくれる?」って言われて。
「僕がイメージするものと違ってきちゃうんだけどなあ」なんて思うけど、コレクションは耀司さんの世界だから。

山本 (笑)。

高橋 実際、耀司さんのアイディアが反映されたショーはおもしろかったりするんですよね。当たり前だけどショーの世界観は耀司さんの頭の中にしかないわけで。それを実感してからは、こちらはもう、まな板の上の鯉というか。曲を渡したら耀司さんの調理にまかせるというか。耀司さんのショーの中で生かされる高橋幸宏の曲という、そういう点では本当の意味でのコラボレーションだったかなあと思いますね。とはいえ、たとえば逆の立場でね、耀司さんに提供してもらった服を「ボク、耀司さんの服バラバラにして、こういうふうに切っちゃったんですけど、いいですか?」とは言えませんよね(笑)。

山本 (笑)。

高橋 今なら洗濯機に入れるぐらいはやるかもしれないけど(笑)。

山本 (笑)。WORLD HAPPINESSは今回で何回目なの?

高橋 8回目です。

山本 そんなにやってるんだ。そうやって若手を育ってるってすごいよね。

高橋 育てるってつもりはなくって、単にボクが興味ある人たちに集まってもらってるんですが、WORLD HAPPINESSに出てくれた1、2年後ぐらいには大メジャーになっちゃってるアーティストは何組もいますね。……でも、そうやって大きくなると出てくれないんですよ、もう(笑)。

山本 何それ! そりゃないだろ。

高橋 自分たち単独でドーム・クラスの会場でできるようになるとね……。

山本 ファッション界ではね、そういうことができないんですよ。僕が若いデザイナーを何人か集めて合同でショーをやろうみたいなことを考えても、日本では人が集まらないんです。

高橋 イタリアとかだと、若手育成のためのショーみたいなのがありますよね。

山本 いくつかはありますね。ただそれは、だいたいコンクールで、そのコンクールで賞をもらって三位ぐらいまでに入ると、パリに展示会を持っていける資金を提供してもらえるとか、そういうことで。そこからすぐに大ブレイクっていうのはファッション界ではないですね。

高橋 WORLD HAPPINESSという場が登竜門みたいになっているわけじゃなくて、「この人、いいな」っていう人にボクが目を付けてるだけです。おもしろいなと思わせる人は、それだけで可能性があるってことなんじゃないですかね。
売れ線というだけではなくってね、相当変わっていておもしろいなっていう人もあって。このひねくれ方がイイみたいな感じとかね。それはそれで、数ではなく、ある層に強く訴えかけるアーティストとして長くやってくれたらいいなとも思うし。

山本 幸宏自身が3回転ぐらいひねくれてるから(笑)。

高橋 そうなんですよ。いまは6回転ぐらいで(笑)。

山本 倍になってる(笑)。オレはねえ、幸宏が毎年こういうのをやってるのってよく知らなかったのね。これまで出ている出演メンバーを聞いて「あ、幸宏って偉いんだな」って、つくづく思った(笑)。

高橋 いえいえ、単に業界が長いだけですよ。

山本 偉いですよ。……幸宏とは、いろんな事情ですごい関係は深いんですよ。関係が深いから、平気で一緒に飯食ったりするんですけど、こと音楽となるとね、この人は世界的な人じゃないですか。

高橋 耀司さんこそ世界的な人じゃないですか!(笑)。

山本 そこに音楽ではド素人なオレが「ねえ幸宏」なんていうのは、恐れ多くて言えないですよ。

高橋 けっこう言われてますけどねえ(笑)。

山本 このイベントは、WORLD HAPPINESSっていうタイトルがとっても明るいのと、特定の政治色がないのがいいですね。純粋に音楽の力で励ます、楽しむ。すごいピュアだと思いますね。

山本耀司×高橋幸宏 対談

──
確かにWORLD HAPPINESSという名前は無色な印象が強いですよね。なによりも名前の間口が大きいというか。高橋間口は大きすぎますよね(笑)。山本デカくかまえたもんですよねえ(笑)。
──というわけで、今回のWORLD HAPPINESSですが。

高橋 いつも通りやれればいいなって思いますね。今年は日付が8月23日で、これまでより二週間遅れでの開催です。去年は台風が直撃しちゃいましたけど、さらに台風の危険が増すかも?という日程なんですが。でも、きっと大丈夫です。<モーゼ・幸宏>と言われてますから。数年前に盲腸の手術をしてから効力が弱まってしまった感じもありますが(笑)。

──
晴れ男・高橋幸宏伝説復活といきたいですね(笑)。周辺は雨が降ってるのに、WORLD HAPPINESSの会場だけ奇跡的に雨が降らなかったみたいなことも何度もありましたよね。

高橋 耀司さんのパワーも入れてもらって、なんとかいい環境で楽しくやりたいですね。耀司さんにはなんなら楽屋も用意しておきますから(笑)。

山本 だいたい、このイベントになんでオレは客としてしか呼ばれないんだっていう(笑)。

高橋 なんでオレはアーティストじゃないんだ、と。

山本 そういう不満はあるんですけど(笑)。

高橋 鈴木慶一、耀司さん、僕で、THE BEATNIKSとして一回ライブやったことがありましたね。ドラムがスティーヴ・ジャンセンだったり、ものすごい豪華でしたけど、とても楽しいコンサートだった覚えがあります。いつか、ああいうかたちで出ていただくのもいいかなと思いますね。

山本 いや、オレは苦しかった(笑)。二人(慶一、幸宏)はプロじゃない?

高橋 いや、楽しそうでしたけどね。貫禄充分でした(笑)。

山本 二人についていくのがやっとだった。

高橋 いつかいいタイミングでやりましょうよ。満を持してっていうタイミングで。そうだ、お客さんの退出時にやるっていうのはどうですか?(笑)。「おっと待て、誰だ?」ってお客さんが足を止めるっていう(笑)。

山本 うん、いいかも(笑)。

(対談記事引用)