宇宙のナゾ“重力波”に挑む 巨大観測装置
「重力波」世界初観測へ 望遠鏡が完成
2015年11月6日 13時59分nhk.or.jp/news
アインシュタインが存在を予言した「重力波」と呼ばれる現象を観測しようと、東京大学などが岐阜県の山の地下深くに建設した巨大な観測装置が完成し、報道関係者に公開されました。
かつて重力波が直接捉えられたことはなく、世界が100年越しで挑んできた物理学の難題の行方に注目が集まっています。

1915年から1916年にかけてアインシュタインが発表した「一般相対性理論」では、質量がある物質はすべて空間をゆがめているとされ、物質が動くと空間のゆがみが「重力波」という波として伝わると予言されています。

しかし、極めて重い星が爆発しても、伝わってくる空間のゆがみは、太陽と地球の間の距離が水素の原子1個分伸び縮みする程度と考えられ、世界でも直接観測できた例はありません。
このため東京大学宇宙線研究所などでは、世界に先駆けて重力波を捉えようと、岐阜県飛騨市の山の地下深くで巨大な観測装置の建設を進めてきました。
完成した装置は「重力波望遠鏡」と呼ばれ、長さ3キロある2本のパイプがL字型につなげられていて、この中でレーザーを使って精密に距離を測ることで、重力波による空間のゆがみを捉えます。

重力波を捉えることで、世界が100年越しで挑んできた「一般相対性理論」の難題が確かめられるほか、将来は宇宙誕生の謎にも迫ることができると期待されています。
重力波望遠鏡は、試験運転を経て、2年後には本格的な観測を始める計画ですが、アメリカやヨーロッパも初観測を目指していて、研究競争の行方にも注目が集まっています。

ノーベル賞選出の梶田さん「正念場」
重力波望遠鏡の計画を中心的に進めてきた東京大学宇宙線研究所の所長で、ことしのノーベル物理学賞に選ばれた梶田隆章さんは、「多くの国民の理解がないと、このような施設は認められない。基礎科学の研究を進めることを許すような国民の理解が非常にありがたい」と話していました。

そのうえで、「観測に向けては、これからが正念場です。今後数年間が非常に重要な期間となります」と本格的な観測開始に向けて気を引き締めていました。
物理学の難題 重力波とは
アインシュタインが発表した「一般相対性理論」は、宇宙の数多くの現象を言い当て、現在の物理学の土台となっていますが、予言された現象の中で唯一確かめられていないのが「重力波」です。

「重力波」は、質量がある物質が動いた際に空間のゆがみが波となって光の速さで周囲に伝わるというもので、何にも遮られることはないとされています。しかも、空間のゆがみは極めて小さいため、理論の発表から100年になる現在も重力波を直接観測した例はなく、成功すればノーベル賞級の成果と言われています。
今回完成した重力波望遠鏡は「KAGRA(かぐら)」と呼ばれ、極めて小さな空間のゆがみを捉えるため、振動や温度変化の少ない地下200メートル以上のトンネルの中に設けられました。さらに、装置の中は真空に保たれ、レーザー光線を反射する鏡は分子の振動を抑えるためにマイナス253度まで冷やされます。
重力波を直接捉えることができれば、「一般相対性理論」の最後の難題が確かめられるだけでなく、強力な重力で光さえも飲み込んでしまうブラックホールの誕生の瞬間を直接観測できるようになるなど、天文学に新たな観測手段をもたらすことにもつながると期待されています。

一方、欧米でも重力波の初観測に向けて大規模な観測装置が建設されていて、国際間の研究競争は激しさを増しています。
天文学の飛躍的発展に期待
「重力波」を直接捉えられるようになると、天文学の分野でも飛躍的な発展につながると期待されています。

古代、天文学の起源は、星が放つ目に見える光の観測でした。現在も光の分析は、星の温度や物質の構成のほか、ブラックホールの研究にも利用されています。
一方、「ビックバン」の名残などとして宇宙には電波が飛び交っていて、20世紀に入ると、こうした電波をはじめとした電磁波を捉える研究が進み、光では見ることができない、さまざまな天体現象の発見につながりました。

その次の観測手段として注目されているのが、「素粒子」、とりわけ宇宙の初期に大量に作られた「ニュートリノ」です。ニュートリノはさまざまな物質の影響を受けにくく、宇宙が誕生したときの状態を今もとどめていると考えられているため、これを観測することで、宇宙の誕生と進化の過程の解明につながると期待されています。
そして、光、電磁波、素粒子に続く第4の観測手段が「重力波」です。重力波は何にも遮られることなく宇宙を伝わるので、この観測に成功すれば、強力な重力で光さえも飲み込んでしまうブラックホールの誕生の瞬間など、従来の手段では見ることができなかった新たな宇宙の姿を捉えられると期待されているのです。
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http://www.jiji.com/jc/p_archives?id=20151106151313-0020241571
 
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人類の新しい目 ̶̶ アインシュタインの重力波
神岡池ノ山地下に建設中の大型低温重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)( 東京大学宇宙線研究所)
現在、スーパーカミオカンデがある池の山の地下では、「KAGRA(かぐら)」という大型重力波望遠鏡の建設が進められています。1本3 キロメートルのアームを2 本持った巨大レーザー干渉計で、地球と太陽間の距離が水素原子1個分の大きさ程度変化するという微細な変動をも捉える、超高精密度のものさしです。
その目的は、宇宙から到来する重力波の史上初の観測で、2017 年度内の本格稼働を目指しています。
重力波とは、空間の距離の伸び縮みが波として伝搬する現象で、中性子星などの非常に重たい天体が互いを周回する連星や、超新星爆発、ブラックホールの誕生など、重力場の変化により発生します。
アインシュタインの一般相対性理論が予言する現象のうち、唯一まだ直接検証の実現していない現象で、この「アインシュタインの最後の宿題」を果たすことで、一般相対性理論の検証のみならず、電磁波や素粒子など他のメッセンジャーでは観測不可能な、まったく新たな天体や宇宙の情報をも得られることでしょう。
KAGRA では、年間10 事象程度の中性子連星合体が捉えられると期待されており、まさに、「重力波天文学」の幕が開けようとしています。
ここでは、多様なメッセンジャーの観測を通して宇宙にアプローチするという観点から、宇宙線研究所で行われている代表的な研究の一部をご紹介しました。
この他にも、暗黒物質の直接探査実験や、高エネルギー宇宙現象の解明、初期宇宙や進化の解明、素粒子理論・宇宙論構築などの理論研究といった、新たな宇宙の姿をあらわにしていく研究が多角的に行われています。今後の宇宙線研究へご期待ください。
(記事引用) 

重力波探査
■重力波によるビッグバン宇宙の探索
http://www.resceu.s.u-tokyo.ac.jp/proj5.php
スペース重力波アンテナDECIGOでビッグバン宇宙に挑む
東京大学宇宙線研究所 | 国立大学附置研究所・センター長会議
DECIGOは1000km離れた3機のドラッグフリー衛星を用いて宇宙にレーザー干渉計を作り重力波を検出しようとする日本の計画です。DECIGO(DECi-hertz Interferometer Gravitational wave Observatory)は0.1~10 Hzの周波数帯にある重力波の検出を狙っています。
DECIGOの最大の目的は、ビッグバン直後の宇宙を重力波をとおして見ることです。これは重力波でしか見ることのできない世界であり、重力波観測によって宇宙誕生の謎が解き明かされることが期待されています。この他のターゲットとしては、宇宙の加速膨張を詳しく調べることによるダークエネルギーの性質の解明や、巨大質量ブラックホール同士の合体に伴う重力波観測などがあります。

DECIGOの打ち上げは2025年頃と予想されています。計画自体が非常にチャレンジングでありこれから克服すべき技術的問題も多いため、私たちは長期的視点にたってDECIGOの開発を進めています。
基礎技術開発の一環としてまず、2009年1月に小型衛星SWIMμνを打ち上げました。この衛星は現在も運用中であり今後の開発にとって貴重なデータを取得しつつあります。現在は次のターゲットである前哨衛星DPF(DECIGO pathfinder)の開発研究を集中的に進めているところです。
DPFはDECIGOの実証機として位置づけられていますが、JAXA/ISASの推進する小型科学衛星の重点候補の一つとなっています。
担当研究者 安東 正樹
(記事引用)