宇宙で目に見える物質はたった5%
XMASS神岡
http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/xmass/darkmatter.html
宇宙の組成宇宙が何でできているかを調べてみると、われわれが知っている、陽子や中性子など”目に見える”(観測されている)物質は全体の約5パーセントにすぎません。
その5~6倍は未知の物質(ダークマター)が占めていると考えられます。残りはダークエネルギーと呼ばれている正体不明のものです(図1)。これまで宇宙の観測に利用されてきたのは、主に光やX線、赤外線などの電磁波ですが、”暗黒”物質というのは、電磁波での観測では見ることができないため、”暗黒(ダーク)”という呼び名がついています。

ダークマター存在の証拠はいくつもある

ダークマターは様々な観測からその存在が示唆されてきました。1970年代後半、渦巻き銀河の回転速度分布を観測し、銀河内の明るい星や星間ガスではない、光では観測できないが重力を感じる物質の存在を立証しました(図2)。また、非常に重い物質(すなわち大きな重力)があると光が曲げられる、という「重力レンズ効果」からもダークマターの存在を示す証拠が得られています。
 
宇宙の成り立ちと密接に関わるダークマター

さらに、現在の宇宙は、銀河、銀河団、何もない空洞などが複雑に連なった大規模構造を形作っていることがわかってきました。この成り立ちは次のように考えられています。初期の宇宙のわずかなゆらぎ(図3)からダークマターの密度に差が生じ、密度の濃いところは重力によってさらにダークマターを引き寄せていき、しだいに目に見える物質であるチリやガスも引き寄せ、やがて星や銀河が形成されていきました。このようにダークマターは宇宙の成り立ちに非常に密接に関わっているのです。

宇宙の96%を占める未知の物質「ダーク」
TEDxTokyo - 村山斉http://logmi.jp/14241
東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構初代機構長 物理学者 村山斉 氏宇宙が何から出来ているのか、どのように働いているのか……。
もしかしたら皆さんの中には「知ってるよ、原子で出来ているんだ。学校で習った」と言われる方もいるかもしれません。私はこういう化学が覚えられなくて嫌いで、実験室ではたくさんの間違いを犯し、さんざんの成績でした。ですから、覚えることの少ない物理学を選びました。

今、大きな改革が起きています。2003年から、ある衛星の観測によって、新たなことがわかってきています。例えば、瓶の中に入っているゼリービーンズをアトム、原子とします。
そうすると原子は宇宙の4パーセントしか構成していなくて、あとの96パーセントは何か、わからないのです。宇宙の96パーセントは理解できていないのです。これが”ダーク”です。”ダーク”は存在するのです。

地球や宇宙の存在に不可欠な「ダークマター」

村山 かつて私たちは、地球が宇宙の真ん中だと考えていました。しかし、太陽が宇宙の中心だとわかり、それから太陽系は、銀河系から離れたところにあるとわかりました。銀河系の離れたところに、若い家族や子供たちである太陽系がいるわけです。ここで私たちが生まれました。非常に喜ばしいことですね。
私たちの銀河系は、大量のダークマターの海で、その中に星が泳いでいるようなものです。素晴らしい映像があります。実はここは、恐ろしい場所を映しています。何が起きているのかというと、二つの銀河系が、衝突したのです。
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しかもそのスピードは4500㎞/s。秒速ですよ。この青い部分がダークマターで、赤く示されているのが原子です。これはレントゲンで見れるものです。二つの星団がぶつかり合うと、恐ろしいことにぶつかり合った原子は熱を発し、摩擦で崩れ落ちます。
キャプチャ7
しかしその間も、ダークマターは何もなかったかのように、幽霊のように存在し続けます。この美しい写真が映しているものは、そのような恐ろしい場所なのです。
ダークマターは、私たちにとってはとても重要なものです。宇宙には何百万という銀河系がありますが、どのように生まれたのでしょうか?
ダークマターは実は良い物質です。このシミュレーションを見てみましょう。宇宙は初め、このように何もない、つまらない状態でした。しかしダークマターがありますと、重力が発生するので、物質同士の出会いが起こります。ここから銀河系が始まり、そして生命が生まれるのです。つまりダークマターがなければ、私たちがここに存在することは出来なかったのです。

「ダークエネルギー」は科学者にとって悪者

村山 目に見えないものについて、話していますが、ダークマターは良い物質であるということが言えます。二つ目にお話したいことは、このダークマターというものは、Matterする、つまり重要であるということです。しかしダークマターは宇宙の23パーセントしか占めていません。では残りは何なのでしょうか?
それはダークエネルギーと呼ばれているものです。これは実際に存在していまして、どこにでもあるものです。宇宙が拡大していることは、皆さんご存知かと思いますが、そのスピードは加速しています。このダークエネルギーが、宇宙を拡大させている力なのです。この美しい銀河系の写真を見てください。
このダークエネルギーによって星々が隔離されていくので、宇宙はどんどん拡大していきます。

残念ながら、このダークエネルギーは悪なのです。なぜならこれによって、私たちが見える星が、近距離の物だけになってしまうからです。
未知のものを恐れず、認めることの大切さ
村山 ダーク、つまり暗黒というものが存在することを認めるまでに時間がかかってしまいましたが、私たちは今、暗黒について新しい実験を行うことができ、存在を認めることが出来ます。そしてこの暗黒に対する戦略が見えてきました。これは素晴らしい発見です。このダークの正体が不明であるにもかかわらず、対抗策がわかったのです。

この暗黒に出会った時、恐ろしいと思うかもしれません。自分には何の力もないと思うかもしれません。しかし、もっとも大事でまず為すべきことは、暗黒が存在することを認めることです。そうすれば、それに対して戦略を考えることが出来ます。最後に私が言いたいのは、暗黒が存在するということがわかっても、恐れるなということです。

ありがとうございました。
(記事引用)