木嶋佳苗被告の死刑確定へ 男性3人殺害事件
NHK NEWSWEB 4月14日 15時05分
8年前、東京・千葉・埼玉で男性3人を殺害した罪などに問われ、無罪を主張していた木嶋佳苗被告に対して、最高裁判所は「犯人だということに疑いを差し挟む余地はない」として上告を退ける判決を言い渡し、死刑が確定することになりました。
木嶋佳苗被告(42)は平成21年に東京・千葉・埼玉でインターネットの結婚紹介サイトで知り合った当時53歳と80歳、それに41歳の男性3人をいずれも練炭自殺に見せかけて殺害した罪などに問われました。犯行を裏づける直接的な証拠がない中、被告側は「自殺や火災で死亡した可能性がある」として無罪を主張しました。
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1審のさいたま地方裁判所と2審の東京高等裁判所は、現場で見つかった練炭やコンロと同じ種類のものを被告が入手していたことなどから死刑を言い渡し、被告側が上告していました。

14日の判決で最高裁判所第2小法廷の小貫芳信裁判長は、3人が死亡する直前に被告と一緒にいたことや、練炭やコンロを被告が事前に入手していたことなどを挙げ「犯人だということに疑いを差し挟む余地はない」として無罪の主張を退けました。そのうえで「ぜいたくな暮らしのため真剣な交際を装って男性から金銭を受け取り、その返済やうその発覚を免れるなどの目的で3人を殺害したもので刑事責任は極めて重大だ」として上告を退け、死刑が確定することになりました。

なお、木嶋被告は養子縁組によって現在の名字は「土井」に変わっています。
「周辺での不審死」と「ぜいたくな生活」
この事件では、木嶋佳苗被告の周辺で不審な死が相次いだことや、被告の華やかな暮らしぶりが注目されました。

一連の事件は、平成21年に起きました。この年の8月、埼玉県富士見市の駐車場の車の中で、41歳の男性が死亡しているのが見つかりました。車内には練炭やコンロがあり、自殺のように見えましたが、捜査の過程で、直前に男性と会っていた木嶋被告の存在が浮かび上がりました。被告はこの男性とインターネットの結婚紹介サイトを通じて知り合っていましたが、被告に処方されていたものと同じ睡眠薬の成分が遺体から検出されたのです。また、車内にあったものと同じ種類の練炭やコンロを被告が購入していたこともわかりました。

さらに、被告と結婚紹介サイトを通じて知り合った53歳の男性と80歳の男性が同じように死亡していたことも明らかになりました。それぞれの現場からは練炭やコンロが見つかったほか、被告が男性らから多額の現金を受け取っていたこともわかり、3人を練炭自殺に見せかけて殺害したとして逮捕されました。

当時の被告のブログには、「外国製の高級車を短期間で買い替えた」とか、「1本1万円もするミネラルウオーターを買った」などと、ぜいたくな生活の様子がつづられ、事件との関連が注目を集めました。

一方で関与を裏付ける直接的な証拠はなく、被告は3人の殺害について一貫して無実を訴えました。平成24年からさいたま地方裁判所で始まった裁判員裁判では、3人が殺害されたのか、自殺や火事が原因で死亡したのかが激しく争われました。また、法廷では、被告が18歳のときに北海道から上京したあと、男性と「愛人契約」を結ぶなどして収入を得ていたことや、その金をバッグの購入やエステなどで毎月使い切っていたことなど、これまでの生活が赤裸々に語られました。

被告側は、金銭的な援助をしてくれる相手を求めていて、死亡した男性らとの結婚を真剣に考えていたと主張しました。1審は当時の裁判員裁判としては最長の100日間におよび、判決では、いずれの事件でも男性らが直前に被告と会っていたことや、現場で見つかった練炭やコンロと同じ種類のものを被告が購入していたこと、男性らに自殺の動機がなかったことなどから、「3人を殺害したのは被告以外にありえない」として死刑を言い渡しました。2審の東京高等裁判所で被告側は改めて無罪を主張しましたが、被告本人は事件に関して発言することはなく、1審に続いて練炭などの状況証拠をもとに死刑を言い渡され、上告していました。
(記事引用)