では、ジャズはいかにして世界制覇を成し遂げたのだろうか? その問いに応えるために、まずは1920年のアメリカへと時間を遡ることにしよう。その2年前に第一次世界大戦が終わり、平和な社会に対する期待と勝利による高揚感が相まって経済が一気に上向きになったことに加え、戦後の楽観的な空気に染まった若い世代が、個人レベルでの大いなる自由を求めるようになっていた。だが、これからはお気楽な快楽主義に根差した生活を送ろうという目論見は、新たな戦いを始めたアメリカ議会によってたちまちのうちに抑え込まれてしまう。それはまるで違う種類の戦争であった。人類の多くが抱える主要な悪癖のひとつを標的にした、道徳的聖戦である。1920年1月16日、犯罪や暴力行為や貧困率を減らし、アメリカ社会の生活水準を上げるという目的の下に、ボルステッド法が成立した。この法律は、アルコールの製造、販売、輸送、消費及び輸入を禁止するいわゆる禁酒法だ。
universal-music ~

https://livedoor.blogcms.jp/blog/raki333-idobatakaigi.com/article/edit?id=1077988103
モダンジャズから現代ジャズ(1960年代前半~現在)
試行錯誤するジャズ――「脱ハード・バップ」の動き、他ジャンルとの融合しばらく続くと思われたハード・バップを中心とするジャズの潮流を変えたのはまたしてもマイルス・デイビス。ハード・バップまでの曲のコード進行に沿って一定の小節を吹き終えたらまた頭のコードに戻り、アドリブの掛け合いをする奏法から、現代音楽などに見られる音階、つまりメロディーラインを生かしたモード奏法への脱却を試みたのです。集大成ともいえるのが1959年の「カインド・オブ・ブルー」。初めの一音を聞いただけでも、新たな歴史の萌芽が感じられる名盤中の名盤です。この後、マイルスは60年代、ハービー・ハンコックやウエイン・ショーターらと黄金クインテットを結成し、モード・ジャズを牽引しました。
「カインド・オフ・ブルー」に愛弟子のテナーサックス奏者、ジョン・コルトレーンが参加していたことも見逃せません。彼はこのアルバムの直後に録音された「ジャイアント・ステップス」で超絶技巧を駆使した、畳み掛けるような音符の嵐で聴く者だけでなく、共演者までも圧倒する「シーツ・オブ・サウンド」を披露し、ハード・バップの到達点を示しました。ハード・バップを極めたコルトレーンにモード奏法という新たな「武器」が加わり、自分の感情や思想を音楽という手段を通じて最大限爆発させたいと考えていたコルトレーンをコードの束縛から解放しました。これが後に触れるフリー・ジャズの広がりにも繋がっていくことになります。
ハード・バップの余韻を残しつつ、新たな方法論を産み出したマイルスとその弟子によるラインとは別に「自由への飛翔」を模索していたのがアルトサックスのオーネット・コールマンでした。彼の音楽、いや音楽というよりも阿鼻叫喚、喜怒哀楽といった人間の感情そのものを表現したかのような「音の原風景」ともいえる演奏は当初ほとんど受け入れられなかったといいます。しかし、前述したマイルスやコルトレーンによる「ポスト・ハード・バップ」に向けた試行錯誤の動きや、アルトサックス、フルート、バスクラリネットを駆使して従来のジャズとフリー・ジャズの間を巧みに空間移動し、橋渡し役を果たしたエリック・ドルフィー、「激情型ジャズ」の代表格ともいえるベーシストにして名作曲家、有能なバンドリーダーでもあるチャールス・ミンガスなどの精力的な活動が融合し、フリー・ジャズの大きなうねりが生じました。
1970年代にはマイルスや彼の弟子のハービー・ハンコックやウエイン・ショーター、チック・コリアらがジャズに電子楽器やエイトビートのようなロックの要素を取り入れたフュージョンを演奏するようになり、一躍ジャズの主流に躍り出ました。特にショーターとジョー・サヴィヌルが中心となって結成した「ウェザー・リポート」、チックの「リターン・トゥー・フォーエバー」はジャズ・ファンでない人々にも支持され、ジャズの可能性を広げました。しかしその反面、フュージョンの台頭は伝統的なジャズの衰退をも意味していました。かつてジャズが聴衆を熱狂の渦に巻き込んだ時代は終わり、「暗黒時代」が到来したと嘆息した人々も少なくありません。
1980年代以降はウイントン・マルサリスなどの若手を中心に、フュージョンからの「揺り戻し」を狙った伝統的ジャズの見直しの動きが広がる一方、クラシックや民族音楽、ポップスなどとの融合も進み、一言で「ジャズ」と括れなくなるほど多様な音楽へと進化しています。
この時代の代表的なミュージシャン
この時代のお勧めアルバム
![]() | ハービー・ハンコック 「処女航海」 レーベル: EMIミュージックジャパン |
---|
![]() | チック・コリア 「ライト・アズ・ア・フェザー (完全盤)」 レーベル: ポリドール |
---|
コメント