2016年03月

チキノサウルス:
ニワトリから恐竜を生み出そうとしている科学者たち
2016.03.27 SUN 17:20wired 
チリ大学の研究者チームが、ニワトリの胚を遺伝的に操作することにより、恐竜の後肢を再現することに成功した。
約6,500万年前、地球で暮らしていた生物種の76パーセント以上が死に絶え、恐竜の支配に終止符が打たれた。しかし、このとき、すべての古代の爬虫類が消えたわけではない。例えば鳥類型恐竜はこのときの大惨事を生き延び、新しい生態系と生物学的なニッチを開拓しながら少しずつ進化して、今日わたしたちが鳥類と呼んでいるものへと姿を変えた。
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いま、彼ら“現代の子孫たち”の胚をつかうことで、世界中でさまざまな研究チームが古代の恐竜を甦らせようとしている。そして、この研究における重要な前進がチリ大学によってもたらされた。同大学の研究者チームが、ニワトリの胚の発達を遺伝的に操作することにより、恐竜の後肢を再現することに成功したのだ。

彼らの研究は、いわゆるチキノサウルス(Chikenosaurus)の系譜にある。ニワトリを遺伝的に操作して、その遠い祖先の隔世遺伝的特徴を取り戻させて、恐竜に似た何かをつくり出そうとする研究だ。この分野には著名なるパイオニアがいる。言わずと知れた現代の恐竜研究の父の1人で、映画「ジュラシック・パーク」シリーズでテクニカルアドヴァイザーを務めた古生物学者、ジャック・ホーナーだ。

学術誌『Evolution』で発表された新しい研究において、チリ大学の研究者チームは「腓骨」に注目した。鳥類と恐竜の間で大きく違う足の骨だ。しかし、現代の鳥類の胚における脛骨と腓骨は、古代の恐竜のものと同じ形状を示している。そして、発達するにつれ、腓骨はその形を変えるという。

この発達の間の、骨の末端部における活動的な分子のメカニズムを研究することにより、チリの研究者たちは「Indian Hedgehog」と呼ばれるある遺伝子の早熟な活動に気付いた。これは細胞の成熟の原因となっていて、細胞の複製を阻止するメカニズムと関係している。

研究者たちは、ニワトリの胚のなかのIndian Hedgehog遺伝子の活動を実験的に阻止した。これによって腓骨は長く、脛骨は通常よりも短くなり、恐竜のものにより似た形状となった。

この成果により、最初に新しいタイプの腓骨へと進化した鳥類の祖先を、研究者たちは割り出すことが可能となる。
(記事引用)

「レバント」地中海古代史.02 
(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2009年3月号)
collection_ph09-06 図書館が存在する目的は、「学習の鼓舞」すなわち「万人に開かれた」学習の確保という公共善を促進することにある。他方、企業を設立する目的は、株主を儲けさせることにある。実利経済が公共の利益にもなると考えれば、それはそれでよろしい。とはいえ、図書館の資産の商業利用を認めれば、根本的な矛盾をそのまま放置することになりかねない。つまり、万人が無料で閲覧できるという方向ではなしに、コレクションをデジタル化してネット上で販売するというのは、学術雑誌が民間出版社に管理を任せたのと同様のミスを繰り返すことにほかならない。しかも、それは遙かに大規模なものとなる。公共の知識を私有化する道具として、インターネットが利用されることになるのだから。ここでは、公共の利益と私的利益の断絶を埋めるために、何か見えざる手が働くわけではない。断絶を埋められるのは公衆だけだ。だが誰が公衆を代表するというのか。「ミッキーマウス法」を可決した議員たちではないことは確かだ。

 啓蒙思想を議会で立法化するなどということはできない。だが公共の利益を保護するルールは作ることはできる。図書館が代表するのは公共の利益である。図書館は企業ではないが、コストは考慮しなければならない。何らかのビジネスプランは必要である。その戦略は、電力会社コン・エジソン社がニューヨーク市で建物間に電力を通すため、街路掘削工事を行なったときに唱えた、「われわれは掘らねばならぬ」というスローガンを思い出させなくもない。「われわれはデジタル化しなければならぬ」と図書館司書たちはいう。だがどんな方法でもよいというわけではない。それは公共の利益のために、すなわちコンテンツについて市民に対する責任のあることを踏まえながら、実行されなければならない。

 ウェブを啓蒙思想と同一視するとしたら、それはやはり素朴な見方であろう。ジェファーソンが考えたよりもはるかに広範囲に知識を流布する方法を、まさにウェブはもたらしたのである。だがインターネットがハイパーリンクを通じて少しずつ作られている間、大企業は高みの見物をしていたわけではない。大企業は、あわよくばゲームを支配し、それを掌握し、所有しようと狙っている。むろん企業同士はしのぎを削っているが、競争は熾烈をきわめ、弱小企業は振り落とされていく。生き残りを賭けた彼らの闘いから生まれるのは、法外な権力を備えた寡頭支配体制であり、そこで追求される利益は、公衆の利益とは百八十度異なるものだ。

 民間企業グループが公共財を金づるに仕立て上げるのを、手をこまねいて見ているわけにはいかない。なるほど、われわれはデジタル化しなければならない。だがわれわれはとりわけ民主化しなければならないのだ。すなわち、われらが文化遺産に対するアクセスを公共化しなければならないのである。ではいかにしてか。ゲームの規則を書き直し、私的利益よりも公共の利益を優先させ、建国初期の共和派のひそみに倣って、デジタル版の知の共和国を創設することである。

 それにしても、こうしたユートピア志向への急変はいったいどこから生みだされたのか。グーグルからである。この企業は4年前、大学図書館の蔵書目録にある著作物のデジタル化を開始し、1セントたりとも求めることなく、研究文献をまるごとウェブ上にのせ、パブリックドメインになった著書をアマチュアに公開したのである。今日では例えば、オックスフォード大学のボドリアン図書館蔵書、女性作家ジョージ・エリオットによる傑作小説『ミドルマーチ』1871年初版をデジタルファイルで無料で閲覧し、ダウンロードすることができる。グーグル・ブック検索のページ上の、慎ましいと言えば慎ましい広告から収入を得るグーグルも含め、そこでは誰もが得をするのだ。

 グーグルはまた、著作権によって保護された書物もますます数多くデジタル化し、その抄録をウェブ上で公開してネット利用者の検索に供している。2005年9月と10月、巨額の逸失利益に目を剥いた著作者と出版社らのグループがグーグルに対して集団訴訟に踏み切り、自分たちの財産権の保護を求めた。2008年10月28日、数多くの折衝を重ねた結果、両者は和解に達し、あとはニューヨークの裁判所による認可を待つばかりとなっている。

 この文書によると、著作権を保有する著作者および出版社の利益を代表するブック・ライツ・レジストリー社という企業が創立されることとなった。グーグルは、大学図書館が提供する絶版書を手始めに、巨大な複合的データベースへのアクセスを有料化する。高校や大学、様々な機関は「機関ライセンス」を購入することによってデータベースに接続できる。公共図書館には館毎に「パブリックアクセス・ライセンス」が発行され、データベースに無料で接続できるが、接続端末とするパソコンは1台だけに限られる。このパソコンをどうしても使いたくて行列をつくるのが嫌な利用者がいる場合に備え、そのようなニーズに備えた有料サービスである「コンシュマー・ライセンス」が、当然ながら用意されている。またグーグルは、ブック・ライツ・レジストリー社と提携し、上の収入の37%を自社に、63%を著作権保護団体に配分しようともしている。

合意書の解読

 グーグルは、パブリックドメインとなった著作物のデジタル化を並行して進めており、こちらは従前通り無料でダウンロードできる。2008年11月までに同社がデジタル化作業を終えたとする700万点の著作物のうち、100万点がパブリックドメイン、他の100万点は著作権が存続中で書店で購入可能な書籍、そして残りの500万点は著作権によって「保護」されているものの絶版となったか、探索不可能な書籍である。「ライセンス」により商業利用の対象とされる大部分の書籍は、この最後のカテゴリーに属している。

 だが著作権が存続中の多くの著作物について言えば、その著作者や権利承継人、あるいは出版社が別な決定を下さない限り、データベースから排除されたままだ。これらの書物は昔ながらの紙媒体で販売されるか、あるいは「コンシュマー・ライセンス」を通じてダウンロードされたり、電子書籍の形でパッケージされるかして、デジタル化形式で商品化されるかのどちらかとなる。

 要するに、グーグルと著作者ならびに出版社との間の合意書を読み、この合意書にどんな哲学が盛られているかつらつら考えてみると(本文で134ページにおよびさらに15個の付帯書からなる書類を前にして、それはたやすい作業ではない)、驚愕せざるを得ないのだ。ここで創設されようとしているのは、まさに世界最大規模の図書館になりかねない何ものかである。なるほどデジタルの図書館にすぎないが、しかしこの図書館は欧米諸国の数々の権威ある図書館の存在意義を台無しにしてしまいかねない。さらに言うならば、グーグルは、アマゾンが一介の街の書店にすら見えてくるようなデジタル帝国の覇者として、世界の書籍ビジネスの最大手の地位に上り詰めるかもしれないのだ。

 世界中のネット利用者たちが、マウス・クリック一つで米国有数の大学図書館の富にアクセス可能となるという事態に、どうして無関心でいられようか。グーグルの魔術のような技術は、閲覧者が自分の好きな本に思うがままにアクセスすることを可能とするだけでなく、尽きることのない検索の可能性を開いてもくれる。条件付きではあるが、このプロジェクトに提携する図書館は、紛失したり損傷した著作物のデジタル・コピーを使って蔵書を更新することもできる。グーグルはまた、障害を持つ閲覧者がアクセスできる形で本文を提供することも合意した。

 残念なことに、公共図書館でファイルに自由にアクセスできるのが保証されているのは1台の端末のみ、というグーグルの約束からすると、利用者数の多い図書館をはじめ、需要が満たされる可能性は低い。この約束にはさらに制限がついている。著作権のかかっている文書をプリントアウトしようと考える閲覧者は、規定の料金を払わねばならない。とはいうものの、小規模の町営図書館でも、いまやニューヨーク中央図書館よりも多いバーチャルな蔵書を持つことになる。なるほど、グーグルは啓蒙主義の夢を実現するといえるのかもしれない。

 だがそうなるだろうか。18世紀の哲学者たちは、寡占状況を知の普及に対する大きな障害と見なし、書籍の自由な流通を邪魔だてしたロンドンの印刷業組合やパリの書店同業組合を批判していたのだった。

 グーグルは同業者組合ではないし、自社を独占企業とも考えていない。同社は情報へのアクセスの促進という、賞賛すべき目標を追求してさえいる。だがグーグルは、その署名した合意案によって、どんな競争でも制覇できる企業になった。米国で権利行使可能な著作権を保持する著作者や出版社の大多数に対し、自動的にこの合意内容が適用されることとなった。むろんこの合意規定に参画しないという選択肢もあるが、権利者ひとりひとりの同意が得られなければ実現されない以上、他のどんなデジタル化プロジェクトだろうとまず不可能である。まだ2年ほど先のことと思われるが、グーグルのこのやり方が判事たちのお墨付きを得るとしたら、カリフォルニアの巨人は米国で刊行されるほぼ全書籍のデジタル化権限を、一手に掌握することになるはずである。

 こうした結末が不可避だというわけではなかった。われわれはアレクサンドリア図書館の現代版として、国立デジタル図書館を創設することもできたのだから。だが、公権力が事態の推移に呆然としている間に、グーグルがイニシアチブを握った。同社は法廷で主張を行なうかわりに、単に書物をスキャンし、しかもそれをきわめて効率的にやったため、その利益にあずかろうとする輩が出てきた。著作者と出版社が著作権料を取り立てようとするのに呆れるのは誤りだろうし、彼らの集団訴訟の是非を性急に判断することも差し控えるべきである。だが、ニューヨークの裁判所の判断はまだ示されていないものの、合意案の当面の目的があくまで当事者間の利益配分であって、公益の擁護でないことは議論の余地がない。

デジタル社会の岐路

 この事件の帰趨として予測できないことの一つは、グーグルが現実に独占的地位を得るかどうかだ。もはや鉄鋼やバナナの独占ではなく、情報へのアクセスの独占という新しいジャンルが問題なのである。同社に真のライバルは存在しない。マイクロソフトは数カ月来、自社の書籍のデジタル化プロジェクトを放棄したままだし、オープン・ナレッジ・コモンズ(旧オープン・コンテント・アライアンス)やインターネット・アーカイヴのような同業他社も、グーグルに比べればものの数ではない。これほど大規模にデジタル化を行なうのに必要な手段を唯一持っているのが、グーグルである。同社が著作者や出版社と行なった調停案のおかげで、グーグルは合法的に大きな資力を持つこととなった。

 グーグルのこれまでの行動からすれば、同社が自らの力を濫用することはなさそうだ。だが現在の経営者たちが自分たちの持ち分を売却したり、引退したりしたらどうなるだろう。将来の見通しとして、このデジタルデータベースにどのような価格が設定されるかが、この問いに対する答えを決める第一要因だ。実際、今回のような形でなされた合意によって、同社は「1、個別の著作物およびライセンス毎の権利者の取り分は、市場価格に見合った形で調整すること、2、高等教育機関を筆頭に、公衆に広範なアクセスを保証すること」という大原則の遵守を約束しつつも、顧客それぞれと自由にライセンス価格の交渉ができるようになった。

 グーグルがその利用者の利益よりも自己の収益のほうを優遇するとすれば、何が起こるだろうか。合意書の文言を信ずるならば、何も起こらないはずだ。ただ、権利者を代表してブック・ライツ・レジストリー社が動き、グーグル側に新たな価格設定を求める可能性はありうるが、ブック・ライツ・レジストリー社が価格のつり上げを拒否するなどということはありそうにない。他方、グーグルがより低廉な価格を設定する選択肢もありうる。しかし、学術雑誌の出版社たちと同じ戦略をグーグルが取らないという保証はない。最初は魅力的な価格で顧客を惹きつけておいて、餌にかかったら最後、価格をできる限りつり上げるという戦略である。

 市場自由化論者は、市場の自己調整機能が働くはずと反論するだろう。グーグルがあまりに行き過ぎれば、利用者は購読登録を取りやめるだろうから、おのずと価格も下がるだろう、と。だが少なくとも合意協定調印者たちの構想に従えば、「機関ライセンス」の付与に関わるメカニズムにおいて、需要と供給の間に直接の相関性はない。学生と教員、司書たちが自ら支払いするわけではないのだから。

 支払いの当事者は図書館である。もし図書館が購読登録更新に必要な財源を見つけられなければ、グーグルのサービスに「依存症」となった閲覧者たちの抗議の声を招くおそれが出る。図書館側はむしろ、紙媒体書籍の買い入れ数を減らすなど、他の支出の切り詰めを選ぶだろう。出版社側が専門誌の価格を高騰させたときに図書館が取った対策も、実際にそうだった。

 将来を予測することはできない以上、われわれができるのは、合意書の内容を注意深く読み、そこから仮説を導き出すことだけだ。もし、米国の大規模図書館に蓄積されてきた資産に適切な価格でアクセスできる仕組みをグーグルが作るならば、われわれも賞賛を惜しむまい。結局のところ、まったくアクセスできないよりは、たとえ価格が高くとも、膨大な著作物を閲覧できるほうがよいではないか、とも言えるかもしれない。その通りだ。だが、2008年秋の合意案によって、一企業にあらゆる権力が集中することによって、デジタル世界のこれまでのあり方は根本的に転覆させられた。

 ウィキペディアを別とすれば、グーグルはすでに、記事や写真、洗濯機や映画館の入場券にいたるまで、ネット上の情報に米国民の大多数がアクセスする仕方を支配するようになった。有名な検索エンジンに付属するグーグル・アース、マップ、画像検索、Labs(英語)、ファイナンス、アート、フード、スポーツ、ヘルス、チェックアウト、アラート、そして開発中の他のサービスなどがこれに加わる。グーグル・ブック検索はいまや史上最大の図書館となり、史上最大規模の書店を創りあげつつある。

 合意書の上記の解釈が正しかろうと誤っていようと、同意条項の各文言は互いに緊密に結びつきあっており、全体を通して理解されねばならない。いまやこの合意案に大きな修正を加えることは、グーグルにも、著作者や出版社にも、またニューヨーク連邦地裁にもできない。情報社会と呼ばれるものが大きな岐路に立とうとしている。いまわれわれが均衡を回復させなければ、私的利益が公共の利益よりもはっきりと優先される事態が生じる可能性がある。そんなことともなれば、もはや啓蒙の夢は永久に手の届かぬ夢となるだろう。

* この記事の原文は『ニューヨーク・レヴュー・オヴ・ブックス』誌2009年2月12日号に掲載された。

(1) 1998年法は1923年1月1日以後に刊行された全著作物について、著作権の期間を20年間延長した。著作権期間の延長は過去50年間に11回行なわれ、法律構成は複雑怪奇なものとなっている。1992年までは、権利保護の延長を受けるには権利者が手続きを行なう必要があったが、1992年以後は。1964年から77年までの間に刊行された書籍については自動的に延長されることになった。ただし、その対象は、1976年法の下で、著作者の生存期間中ないし没後50年の著作権が存続している著作物に限られる。1998年法は、保護期間をさらに20年間にわたって延長した。したがって、1963年以後に刊行された全書籍は、著作権の保護期間内にある。1923年から64年に刊行された書籍についても、著作者と権利承継人に関する情報が不完全なため正確な数は不明だが、やはり大部分が著作権の保護期間内にある。この点については、Cf. Paul A.David and Jared Rubin, << Restricting access to books on the Internet : Some unanticipated effects of US copyright legislation >>, Review of Economic Research on Copyright Issues, Vol.5, No.1, Christchurch (New Zealand), September 2008.
(2) 和解文書の全文は次のサイトで閲覧できる。http://www.googlebooksettlement.com/agreement.html
(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2009年3月号)

* 小見出し「合意書の解読」の二つ前の段落「~2005年9月と10月、「巨額の逸失利益~」中のカギカッコを削除(2009年4月4日)
(記事引用) 

アナトリア近国遺跡発掘品画像
http://galapagosjapas.blog.jp/archives/4888864.html

難民に無償でメガネ提供 活動続け33年、札幌の富士メガネに聞く 5月に社員7人がアゼルバイジャン入り
2016年3月20日 10時0分 withnews 
 世界的に難民問題が混迷を深めるなか、自社の強みを生かして、地道に難民支援を続けている会社があります。札幌に本社がある「富士メガネ」です。今年5月には社員7人がアゼルバイジャン入りし、現地の難民・国内避難民の視力を測定し、一人一人に合った新品の眼鏡を無償配布する予定です。これまで33年かけて、6カ国で14万5000組のメガネを寄贈してきました。社員のモチベーション向上にもつながっているという活動について、詳しく聞きました。
ペルシャ3

支援開始は1983年
 富士メガネが難民支援を始めたのは1983年。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と連携し、これまでにタイやネパール、アルメニアなどを巡り、難民らの検査をして、14万5487組の眼鏡を寄贈してきました。

 きっかけは、現会長である金井昭雄さんがアメリカ留学中、先輩オプトメトリスト(米国の視力測定医)とともに、アリゾナの先住民族の視力検査ボランティアに参加し、自らの仕事の重要さを痛感したことでした。

 帰国後に構想を温めていたところ、インドシナ難民がタイに流入したことで、関係者から支援要請を受けました。1983年が富士メガネ創業45周年だったこともあり、記念事業としてタイへの支援がスタートしました。

 それから毎年欠かすことなく支援を続け、対象となる国も増加。来月には新たにイラクの国内避難民に新品の眼鏡を送る予定です。

 こうした活動が認められ、金井さんは2006年、日本人として初めてUNHCRの「ナンセン難民賞」を受賞しています。
なぜ支援を続けるのか?
 なぜこうした支援を続けるのか? 富士メガネ会長の金井昭雄さんに聞きました。

 ――毎年欠かさず継続している理由を教えて下さい

 「視覚の補正という支援は、それを受けた難民・国内避難民の方々の喜びがとても大きく、関係各所からの要望が強いので、それにお応えしている状況です。メガネを無償で提供するのだから、喜ばれて当たり前かもしれませんが、涙を流したり、我々に抱きついたり、心の底から喜ぶ様子を見ると、連日の検査はきつくても『来年も』と頼まれると断れません」

 ――自社にとってのメリットは

 「これまでに171人の社員を派遣してきました。難民・国内避難民の方々の自立の足掛かりになる様子を目前にして自分の職業を誇りに思い、モチベーション向上につながっています。また、派遣された社員は社会人として広く世界の状況に目を向けるようになります。店頭でも、CSRにご興味を示されるお客様が多くいらっしゃるので、実体験をお話しして活動へのご理解をいただいています」
今後の展開は
 ――これまでの支援の中で印象的だったエピソードがあれば教えて下さい

 「毎回がドラマの連続です。自国で正しい視力の診断や眼鏡がないために、重度の視力障害と考えられていたお子さんが、検査と眼鏡で視力を回復。将来を深く案じていたご両親が大変喜ばれて、心からの感謝のメールをいただいたこともあります」

 ――メガネの寄贈以外にも支援は

 「近年、世界の難民・国内避難民の数は急増し過去最高となっています。物資・人材両方の面で負担が増大していることを受け、財政面での支援も行っており、2013年から10年間かけて総額100万ドルの寄付をしています。また、全店・事務所に募金箱を設置して集まった寄付金を国連UNHCR協会へ送金しています。2015年は74万5919円で、累計で518万1388円になりました」

 ――今後の展開について教えて下さい

 「今後もオプトメトリーという専門分野と、社業である眼鏡専門店としての特性、企業としての機動性を活かし、視力の改善を通じて人々の経済的自立を支援し、子どもたちが教育を受けて将来に展望を抱けるよう貢献していきたいと思います」
(記事引用) 
 

放置国家の企業売国
「も、しょうがない」、というのは判っているのに、シャープメインバンクの決断のなさは、やはり江戸幕府政権時代、外様藩政の悪しきDNAを今更拭いきれないという、「錯誤」が顕著で、そんなこと指摘される前に、当事者頭取クラスは、充分承知しているはずだ。

永田町官僚との話し合いがもつれて時期を逃した、なんて裏話は、後の「通産秘話トップシークレット」のタイトルで出版してくれれば、読んでみたいがね~。だれも買わんか?


シャープ再建は、もう手遅れ 
失われた4年間の愚策
三品和広 [神戸大学大学院経営学研究科教授] 2016年2月15日ダイヤモンド
 シャープの行方をめぐる議論や報道が賑々しい。それを横目で眺めていると、どうもフランス語でいう「デジャヴュ」の感覚を拭えない。最初の赤字転落から6年以上も経つので、同じ話が蒸し返されるのは仕方がないとしても、大局を見誤って禍根を残す愚は何としても避けるべきであろう。

かつての栄光は見る影もなし
もはや「守るべき」技術などない
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 シャープに関する議論はややこしい。その一因は、「かつてのシャープ」と「いまのシャープ」を混同する人が後を絶たない点にある。両者は似ても似つかない。まずは、そのあたりで認識を揃えるところから始めよう。

 シャープが順風満帆だった2008年3月末と直近の15年12月末を比べると、シャープは株主資本を1兆円以上も毀損し、生産設備を主力とする有形固定資産も3分の2を手放した。その結果、時価総額は9割が吹き飛んでいる。国内社員の8割を温存しているが、企業価値は以前の1割しか残っていない。いまや3000億円も出せばシャープが買えるのに、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業以外に買い手は現れない。


かつての液晶王国のイメージから「シャープの技術を守るべき」との議論はいまだにある。しかしシャープの現状を直視すれば、そのような考えは誤りであることが分かる Photo:東洋経済/アフロ
 債券市場でもシャープは債務不履行の可能性が高い貸出先と格付けされてしまい、尋常な方法では外部資金を調達できない。みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が金融支援に乗り出していなければ、今頃シャープは債務超過に陥っていたはずである。

 「いまのシャープ」は瀕死の重傷を負っており、もはや「かつてのシャープ」ではない。問題を筋よく解決したければ、現実を直視・凝視することが第一歩となる。

 技術流出を防ぐために、国がシャープを救済すべきという声がある。確かに「かつてのシャープ」は液晶王国を築き上げた。それをレバレッジして経営陣は、ことあるたびに自社の技術力を喧伝してきたが、「いまのシャープ」に守るべき技術はない。守るべき技術を持つのは韓国や台湾のライバルたちで、既にシャープは競争に敗退したと見たほうがよい。

 韓国・台湾の挑戦を受けて日本が苦しむのは、かつて日本の挑戦を受けてアメリカが苦しんだのと同じ図式で、そもそも防衛戦は難しい。液晶ディスプレイは何種類ものフィルムが貼り合わさってできており、その構造を編み出したシャープは称賛に値するが、いまや技術の焦点は部材性能に移っている。その部材を韓国・台湾勢に向けて供給するのは幸いなことに日本のサプライヤー群で、シャープの偉業は部材メーカーが謳歌する高収益のなかに生き続けている。そう考えれば腹は立たない。

 もちろん、シャープが自社で利益を取り込むことに成功していれば、そのほうがよいにきまっている。しかしながら、シャープは亀山で技術を囲い込む戦略に打って出て、敗退した。囲い込んだ部材メーカーの国内同業ライバルたちがリバース・エンジニアリングをして、部材を韓国・台湾に売り込んだからである。競争社会で、この手の誤算は高くつく。

「守るべきは雇用」という
考え方の落とし穴

 残る社員の雇用こそ守ってしかるべきという声も、日本では絶えない。もちろん、小さな代償で守ることができるなら、そうすべきだと私も思う。しかしながら、代償は決して小さくない。


みしな・かずひろ
1982年一橋大学商学部卒業、84年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了、 89年ハーバード大学文理大学院博士課程修了後、ハーバード大学ビジネススクール助教授、 97年北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科助教授などを経て04年神戸大学大学院経営学研究科教授。 専攻は経営戦略、経営者論。『戦略不全の因果』『戦略暴走』『総合スーパーの興亡』『どうする?日本企業』(以上、東洋経済新報社)など著書多数。
 そのロジックの核にあるのは、モラルハザードである。わかりやすく説明すると、いったん自動車保険に加入すると運転が慎重さを欠く現象が、モラルハザードにほかならない。

 車を運転していて人を死なせてしまうと、その瞬間に1億円を超える借金を背負うとしよう。従来通り運転を続ける人が何人いるであろうか。運転を続ける人にしても、平均速度はぐんと下がるに違いない。多くの人がハンドルを握り、法定制限速度プラスアルファまでアクセルを踏むのは、保険があってこそなのである。

 競争に敗退したシャープを経営破綻から救う行為は、保険と同じように機能して経営者のモラルハザードを呼び込んでしまう。

 財閥が系列を形成し、メインバンクが困窮した企業を救ってきた日本では、実際にモラルハザードが頻繁に起きていた。腑に落ちなければ、拙著『戦略暴走』を一瞥していただきたい。モラルハザードのコストが優に兆の桁に乗ることがわかるはずである。自動車は保険を設けて多くの人々に運転する道を開いたほうがよいが、経営は断固として違う。

 職を失って人生の再構築を迫られる人が大変な思いをすることは事実である。だからと言って、そういう人の救済を最優先にしても、結局は経営者は同じ轍を踏んで失敗してしまい、職を失う人が将来にわたって出続けてしまう。だから、シャープの悲劇を1社で済ませるために、シャープの痛みをオブラートに包んではいけないのである。守るべきは現世代の雇用より未来の何倍もの雇用であり、そのために必要な規律なのである。

液晶の「オールジャパン」構想は
実現しても失敗するだけ

 では、シャープはどうすればよいのか。これまでの経緯を整理すれば、答えは自ずと見えてくる。

 シャープは我が世の春を謳歌していた07年5月に、堺工場の建設に踏み切った。巨大な液晶パネル工場を動かすために、この時点でシャープはオールジャパン陣営の形成に動いていた。パイオニア、東芝、ソニーあたりがパネルのOEM供給を受ける案に同意したが、オールジャパン(松下電器は含まれなかった)でも国際競争には勝てず、09年10月に始動した堺工場がフル操業する日は来なかった。堺工場は太陽電池、亀山工場は中小型液晶に活路を見出そうとしたが、そのプランBも不発に終わっている。

 社運を賭し、死力を尽くして、シャープは奇しくも一つの時代が終わったことを証明した。産業革新機構に、シャープを超えてできることなど、何一つとして残されていない。ここで日の丸連合を再結成するなど、シャープの健闘を無為にするようなものである。その点は、ここに特筆しておきたい。

 シャープは、韓国・台湾勢も赤字転落するなかで、最初にギブアップした。技術蓄積を誇る一方で、財務基盤が一番弱かったからである。同じ問題が産業革新機構にも襲いかかることは、目に見えている。

2012年春に敗戦は明確に
銀行に翻弄され続けたシャープ

 シャープの黄金時代を演出したのが町田勝彦氏であることは疑う余地がない。彼は12年春に敗戦を自覚すると、シャープを鴻海に託すことにした。液晶部門をジャパンディスプレイに合流させる道もあったが、「親方日の丸」の下だとシャープは腐ると見切って、却下したのである。

 ところが、町田勝彦会長と片山幹雄社長が引責辞任し、あとを継いだ奥田隆司社長が翻意する。奥田氏は鴻海を遠ざけ始め、邦銀に接近した。銀行の支援条件を満たすべく、社員数を3000人以上も減らし、平均年収を80万円も削ったが、止血に失敗し、皮肉なことに自ら呼び込んだ銀行に1年で引導を渡されてしまう。そしてシャープの漂流が始まった。

 奥田氏のあとに高橋興三社長が登板しても、もう路線を変える余地はない。シャープが銀行に翻弄される様は周知のとおりである。

 すでに12年春の時点で、シャープは敗戦処理を必要とした。それなのに自主再建路線を選んだ奥田氏の錯誤は、このうえなく高くついたと言わざるをえない。

4年間の半端な延命策で
8500億円を無駄にした

 下の表はシャープのバランスシートを4つの断面で切り取ったものである。A列は黄金時代最後の通期決算で、この翌年度にシャープは史上初の営業赤字を記録する。B列は2度目の営業赤字を出した通期決算、C列は3度目の営業赤字を出した通期決算、D列は直近の四半期赤字決算に呼応する。A列とB列の差分は、町田勝彦会長と片山幹雄社長による再起の努力を反映する。同様にB列とC列の差分は奥田隆司社長、C列とD列の差分は高橋興三社長の経営成果に相当する。


 A列とB列の間でシャープは400億円近い営業利益を稼ぎ、5000億円弱の最終赤字を計上した。B列の時点で企業価値の7割が消え去っている。奥田氏以降は1000億円以上の営業赤字に陥り、8500億円強の最終赤字を出してしまった。自ら膨らませた夢を萎ませて企業価値を大きく毀損したのは町田―片山ラインであったが、シャープの自己資本を毀損して債務超過に追い込んだのは奥田―高橋ラインである。

 こうして過去の経緯を一望してみると、やはり12年の春が大きな岐路であったことがわかる。そこで鴻海の傘下に入っていれば、シャープは追加で8500億円もの赤字を出さずに済んだかもしれない。残念ながら、自主再建の道を模索していた4年の間に、銀行が注入した約6000億円は蒸発してしまったに等しい。まさに焼け石に水である。仮に銀行が債権を放棄しても過ぎた時間は二度と戻って来ない。企業体として、もうシャープは終わっている。

 仮に銀行の債権放棄なしで鴻海が7000億円を注入しても、シャープが12年3月末の財務基盤を取り戻すには遠く及ばない。銀行の債権放棄を前提に産業革新機構が3000億円を注入しても、大同小異である。「かつてのシャープ」は、いまや蜃気楼に等しいのである。

 収益源を失ったあとの問題の先送りは、雪だるま式に損失を膨らませてしまう。これは、他山の石とすべき教訓であろう。敗戦処理は後ろ髪を断ち切って、とにかく早く大胆に動かなければならないのである。

 その点で、問題を先送りすることなく、ルノー傘下での再建を選んだ日産自動車の塙義一社長(当時)は偉かった。その教訓を学び損ねたシャープは、残念というほかはない。
(記事引用)
 

人間を破った人工知能をつくったDeepMindとは何者か?
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2016.3.12 SAT  http://wired.jp/2016/03/12/deepmind/
「ついにAIが囲碁で人間を負かした。あと10年はかかるといわれていたその偉業を成し遂げたのは、グーグルが4億ドルで買収したロンドンのAIスタートアップ・DeepMindだ。彼らの軌跡を振り返ってみよう。

そして彼らは、3月には公の場で、AlphaGoが世界最高峰の棋士のひとり、イ・セドルと対局することを宣言。冒頭に記した通り、AlphaGoが勝利を収めたのである。
果たしてこの勝利は何を意味するのだろうか? 囲碁という複雑なゲームにおいて、AIが人間を超える次元でふるまったという事実は、“対立”、あるいは“戦略が求められるもの”すべてにおけるAIの可能性を示している(「これには戦争やビジネス、金融取引も含まれる」とディープラーニング研究を行うスタートアップSkymind創業者のクリス・ニコルソンは言う)。」

画像 世紀の囲碁決戦に際して、イ・セドル九段(写真左)とともにポーズを取るDeepMindのCEO、デミス・ハサビス。

2016年3月9日は、人工知能(AI)の歴史において重要な日となった。世界最高の棋士のひとり、イ・セドルが囲碁AIソフトウェア「AlphaGo」に敗れたのだ。
関連記事:グーグルの囲碁AI「AlphaGo」が最強の棋士を破った日
AlphaGoをつくったのは、DeepMind(ディープマインド)というロンドンのスタートアップ。2014年にグーグルが4億ドルで買収した、最注目のAIカンパニーである。
知性を解明すること

DeepMindの創業は2010年。彼らのウェブサイトには「知性を解明すること、それにより世界をよりよくすること」というミッションが掲げられている。彼らはディープ・ニューラルネットワークと強化学習アルゴリズムの2つの研究領域を統合することで、そのミッションに挑んでいる。
設立時には、ピーター・ティールやイーロン・マスク、Skype共同創業者ジャン・タリン、ホライゾン・ヴェンチャーズの李嘉誠(リ・カシン)らがDeepMindに投資をしている。創業から約3年後にはグーグルが同社を4億ドルで買収した(ちなみにこの金額は、グーグルにとってヨーロッパ地域での過去最大の投資だった)。

2015年2月、DeepMindは「DQN」(Deep Q-Network)と呼ばれる彼らのAIが、Atari2600用の49本のTVゲームをほとんど何も教えることなくプレイすることができたという内容の論文を『Nature』に提出。ブロック崩しを行うDQNの動画が話題となった。はじめは素人のような動きだったDQNは、数時間のうちにゲームのコツを学んでいき、ついには人間が思いつかなかったような裏技まで発明してしまったのだ。
関連記事:ゲーム攻略で人間を超えた人工知能、その名は「DQN」
3人のブレイン
DeepMindは、まさにAI研究を行うために生まれてきたようなデミス・ハサビスら3人によって創業されている。
まず、CEOのデミス・ハサビスだ。1976年ロンドンに生まれたハサビスは、4歳のときからチェスに没頭し、始めて2週間も経たないうちに大人を負かすようになったという。6歳でロンドンのU-8大会のチャンピオンになり、9歳で英国のU-11チームのキャプテンを務めている。13歳のときに、同年代で世界第2位のチェスプレーヤーになった。

14歳でGCSE(英国の一般中等教育修了証)を獲得、15歳で数学のAレヴェル、16歳で高等数学・物理学・化学の単位を取得。15歳のときにケンブリッジ大学コンピューターサイエンス学部の試験に合格する(入学は16歳になってからという条件を出された)。ケンブリッジをダブル・ファースト(卒業試験での2科目優等生)で卒業すると、ライオンヘッド・スタジオというゲーム会社に就職。1年後には自身のスタジオ、エリクサーを立ち上げている。

その後、認知神経科学の博士号を取るためにロンドン大学ユニヴァーシティカレッジで記憶と想像の研究を行う。彼の論文は2007年、『Science』誌が選ぶ10大ブレークスルーに選ばれている。ハサビスは同大学のギャツビー計算神経科学ユニットで計算神経科学を学びながら、MITとハーヴァードで客員研究員としても働いていた。
つぎに、AI応用部門ヘッドを務めるムスタファ・スレイマンは、オックスフォードで哲学と神学を専攻したが、2年生のときにドロップアウトし、ビジネスや政治の世界で働き始めることになる(ハサビスの弟とは親友だった)。グーグルによる買収を経た現在では、DeepMindのAI技術をグーグルの製品に統合する仕事を担っている。

最後に、シェーン・レグ。現在チーフサイエンティストを務める人物だ。彼はニュージーランドの大学で複雑系の理論を学んだあと、スイスのIDSIA(Dalle Molle Institute for Artificial Intelligence)に入り、機械知能の計測方法に関する研究で博士号を取得する。その後、神経科学を学ぶためにユニバーシティカレッジのギャツビー計算神経科学ユニットに移り、ハサビスと出会った。

20年の梯子

2016年1月下旬、DeepMindはグーグルによる買収から再び世界を驚かせた。「AlphaGo」と呼ばれる彼らの囲碁ソフトが、15年10月、秘密裏に現欧州チャンピオンであるファン・フイと対局しており、5局すべてでフイを破ったというのだ。
関連記事:「囲碁の謎」を解いたグーグルの超知能は、人工知能の進化を10年早めた
そして彼らは、3月には公の場で、AlphaGoが世界最高峰の棋士のひとり、イ・セドルと大局することを宣言。冒頭に記した通り、AlphaGoが勝利を収めたのである。
果たしてこの勝利は何を意味するのだろうか? 囲碁という複雑なゲームにおいて、AIが人間を超える次元でふるまったという事実は、“対立”、あるいは“戦略が求められるもの”すべてにおけるAIの可能性を示している(「これには戦争やビジネス、金融取引も含まれる」とディープラーニング研究を行うスタートアップSkymind創業者のクリス・ニコルソンは言う)。

ハサビスにとっては、今回の勝利も「小さな一歩」にすぎないのかもしれない。AI研究を現代の「アポロ計画」になぞらえる彼によれば、ディープマインドは「20年ロードマップ」に従っているのだから。
『WIRED』vol.20「人工知能」特集で掲載したディープマインドについての記事でも、ハサビスは「人間と同等の汎用人工知能ができるのは、まだ何十年も先の話です」と語っている。「ぼくたちはいま、梯子の1段目に登ったところです。この先10や20のブレークスルーを起こさなければ、その梯子が全部でいったい何段あるのか、そして『知性とは何か』を解明することはできないでしょう」

AIの進化は、まだまだ序章にすぎないのだろう。だが少なくとも、ぼくらはその梯子のひとつが登られた瞬間を目にしたのである。
 
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【対戦は3/15まで】もし、AIが囲碁で人間を打ち負かしたなら
2016.3.9 WED wired 

1月下旬、グーグルのブレイン集団・ディープマインドの人工知能が囲碁の欧州チャンピオンを負かしたことが明らかとなった。そして3月9日、そのマシンは世界チャンピオンと対決する。AI研究者たちは、なぜかくも囲碁に夢中なのか。囲碁マシンの進化は何を意味するのか。

グーグルの人工知能(AI)は、チェスよりもはるかに複雑な戦略と知性を要する、2,500年の歴史をもつ競技、囲碁の勝負でついに人間の名人を破った。それでも、ニック・ボストロムはさして感銘を受けていない。

ボストロムはスウェーデン生まれのオックスフォード大学哲学教授で、ベストセラー『Superintelligence: Paths, Dangers, Strategies』で注目を集めた人物だ。この本で彼は、知性をもつコンピューターが本当に人類の絶滅を早める可能性があるとしている。そして、彼はグーグルの囲碁マシンの力を軽視しているわけではないが、それは必ずしも大きな飛躍を指すものではないと主張しているのだ。
ボストロムによれば、グーグルのシステムの背景にあるテクノロジーは数年にわたって着実によくなっており、そこにはディープラーニング(深層学習)やリインフォースメントラーニング(強化学習)のような、重ねて議論されてきたAI技術が含まれている。囲碁の名人を負かしたグーグルでさえ、非常に大きな弧の一部にすぎない。それはずっと昔に始まり、今後数年にわたり続いていく弧である。

「AIにはこれまで多くの進展があり、いまでも進化しています」とボストロムは言う。「グーグルの根底にあるテクノロジーは、この数年続いてきた開発の延長線上にあるのです」
しかし見方を変えれば、それこそグーグルの勝利がとても刺激的であると同時に、少し怖くもある理由だ。彼らの勝利は、このテクノロジーがどれくらい進歩してきたのか、そしてどこへ向かうのかを立ち止まって考えてみるいいきっかけになると、ボストロムですら言っている。研究者たちは少し前まで、AIが囲碁で人間に勝利するには少なくともあと10年はかかるだろうと考えていた。しかしいまでは、それがかつて到達できないと思われていたところへと向かっている。少なくとも能力と資本をもつ大勢が、その場所へ到達しようと躍起になっている。

これはグーグルに限った話ではない。フェイスブックとマイクロソフトについての話でもあり、その他多くのテック企業の話なのだ。AI開発というレースにはいま、地球上で最もパワフルで裕福な人々が参加している。
戦略と競争を含む、すべてのことに
「AlphaGo」という名で知られるグーグルのAIシステムは、グーグルが2014年に4億ドルで買収したAIスタートアップ、DeepMind(ディープマインド)が開発した。ディープマインドはディープラーニングとリインフォースメントラーニングの両方を専門としており、その技術はマシンが自ら、広範囲に学ぶことができるようにするものだ。
創設者デミス・ハサビスと彼のチームは、これらの技術を使用して「ポン」「ブロック崩し」「スペース・インヴェーダー」のような古典的なアタリ社のヴィデオゲームをプレイするシステムをつくった。これらのシステムは、プロのゲームプレーヤーを上回っただけではない。それは人間が決してしない、あるいはできない方法でゲームを攻略したのだ。この力こそが、ラリー・ペイジがディープマインドを買収した理由である。

ディープマインドのAIが「ブロック崩し」をする様子。600ゲームをこなしたころ、AIはブロックにトンネルを空けてポイントを稼ぐ方法を発見する。
ニューラルネットワークを利用して、ディープラーニングは『Googleフォト』に非常に効果的なイメージ検索ツールを組み込もうとしている──そしてこの技術は、Facebookの顔認証サーヴィスはもちろん、Skypeに組み込まれた言語翻訳ツールとなり、Twitter上ではポルノを認識するシステムとなる。何百万ものゲームの動きをニューラルネットに与えば、ゲームの遊び方を教えることができる。別の大きなデータセットを用いれば、別の仕事をするようにニューラルネットに教えることができる。検索エンジンの結果を出すことからコンピューターウイルスを認識することまで、ニューラルネットは行うことができるのだ。

リインフォースメントラーニングが、その能力をさらに伸ばすことになる。上手にゲームをプレーするニューラルネットをひとたび構築したならば、それ同士を戦わせることができる。2つのニューラルネットが何千回も試合をこなすことで、そのシステムはどの動きが最も高い報酬(=スコア)をもたらすかを追い求めるのだ。こうして、システムはさらに高いレヴェルでゲームをすることを学んでいく。これもまた、ゲームに限った話ではない。ゲームに似たすべてのことに当てはまるのだ。戦略と競争を含む、すべてのことに。

ハサビスと彼のチームはさらに、AlphaGoにひとつ上のレヴェルの「ディープ・リインフォースメント・ラーニング」、つまり各々の動きの長期的な結果を見通す力を与えた。一方で彼らは、モンテカルロ法といった囲碁を打つAIをつくるための従来の技術にも頼っている。
このように新しい技術と古い技術の双方を用いて、彼らはプロの棋士を打ち負かすことができるシステムを構築したのだ。2015年10月、AlphaGoは現欧州囲碁チャンピオンとの無観客試合をした。試合は5回行われ、5回ともAlphaGoが勝った。

囲碁を制する者は、世界を制す

この勝利以前は、多くのAIの専門家は、AIが人間のプレーヤーを打ち負かすことができると思っていなかった。少なくともこれほどすぐには。
ディープマインドほどの多くの研究者を投入してはいないが、ここ数カ月でフェイスブックも自前の囲碁AIシステムに着手している(グーグルの発表がある前の週に、ディープラーニングの生みの親のひとりであり現在はフェイスブックのAI研究を率いるヤン・ルカンに「グーグルが囲碁の名人を密かに負かしたかもしれない」とわれわれが訊いたとき、彼はそれはないだろうと答えた)。

囲碁の問題は、それがとてつもなく複雑であるということだ。チェスの平均的な手数はおよそ35通りだが、囲碁のそれは250通りである。それぞれの手のあとには、さらに250の選択肢がある。そのため最も強力なスーパーコンピューターでさえ、すべての手の可能性を見通すことはできない。ハサビスが言うように「宇宙の原子の数よりも囲碁の打ち手の数の方が多い」のだ。ゲームで勝つためには、計算以上のことができるAIを必要とする。人間の視力や直観力、学ぶことができる何かを模倣する必要があるのだ。

だからこそ、グーグルとフェイスブックは囲碁の問題に取り組んでいる。AIがそのような巨大で複雑な問題を解決できるならば、現実世界でより実際的な仕事を行うAIシステムをつくる足がかりとして、彼らが囲碁から学んだことを使うことができるからだ。
これらのテクノロジーはロボティクスにフィットすると、ハサビスは言う。彼らは、ロボットによりうまく環境を理解させ、その環境の思いがけない変化に対応させることができるだろう。食器を洗うことができるマシンがいい例だ。しかしハサビスは、これらのテクノロジーが、研究者を次の大きなブレークスルーに向かわせるためのAIアシスタントを提供することで科学を加速させることができるとも考えている。

そしてAIはすぐに、日常生活を変えるアプリケーションとなるだろう。ディープマインドの技術によって、スマートフォンは画像や言葉を認識したり翻訳したりするだけでなく、言語自体を理解するようになるのである。
フェイスブックの“深層”
グーグルが密かに名人を打ち負かしたことを明らかにする数時間前、マーク・ザッカーバーグがなぜFacebook上であれほど囲碁について語りたがっていたのか、以下を読めばその理由がわかる。

グーグルの発表は、学術誌『Nature』で発表される研究報告として届いたのだが、その公式リリースの前に、フェイスブックの社員はその内容を入手していた(それは秘密保持契約のもと、2日前に記者たちに共有されていた)。その結果、ザッカーバーグやほかの社員から、一種の“プレ・ダメージコントロール・キャンペーン”が行われることになった。
グーグルの発表の前夜、フェイスブックのAI研究者は、囲碁に関する彼らの研究について詳述している新しい研究報告を発表した(それ自体まぎれもなく印象的な研究である)。そしてザッカーバーグは、彼のFacebookアカウントからその研究を喧伝した。

「われわれは過去6カ月で、0.1秒の速さで動くAIを構築しました。それは、つくるのに何年もかかった前のシステムと同じくらい、いい出来です」と彼は言った。「これに取り組む研究者ヤンドン・チャンは、わたしの机から約20フィートのところに座っています。わtしはAIチームを、自分の側に置いておくようにしています。そうすれば、彼らが取り組んでいることからわたしも学ぶことができますから」
フェイスブックの囲碁AIがグーグルのAlphaGoほど進んでいないことを、ザッカーバーグは気にしていないという。ルカンが指摘したように、フェイスブックは囲碁問題にディープマインドほど多くのリソースを投入してこなかったし、その問題に取り組むことにさほどの時間を費やしてこなかった。だが本当のところ、フェイスブックは(特にザッカーバーグは)AIに非常に大きな重要性を感じている。彼らは最大のビジネスライヴァルであるグーグルと、AI研究においても激しく競い合っているのだ。

フェイスブックのAI研究を率いるヤン・ルカンが、彼らのAI技術を説明する動画。
しかしこのAI競争は、どちらの会社がより強い囲碁マシンをつくれるかが問題なわけではない。どちらが最高のAI技術者を惹きつけることができるかが問題なのだ。ザッカーバーグとルカンは、自分の会社がこの問題に関して真剣だということを、比較的小さなAIコミュニティーに示さなければいけないとわかっている。

それが彼らにとってどれほど重大なのかは、ザッカーバーグとチャンとのデスクの距離が物語っている。フェイスブックの社内では、どれほどザッカーバーグの近くに座っているかでその人物の重要性が判断されるという。だから、そう、ザッカーバーグはこの問題に個人的に関与しているのだ。とても深く。
ちなみにザッカーバーグは、2016年の個人的な挑戦は「家と仕事の両方で役に立つAIシステムを構築すること」だと語っている。

シンギュラリティへの序曲

グーグルとフェイスブックは、人間の知性をさまざまな点で上回るAIをつくろうとしている。彼ら2社だけではない。マイクロソフトやツイッター、そしてイーロン・マスク、そのほか実に多くの者が同じ方向に向かって進んでいるのだ。それはAI研究にとって重要なことである。そしてニック・ボストロムのような人々にとっては(イーロン・マスクにとっても)、同時に怖いものである。

ディープラーニング研究を行うスタートアップ「Skymind」の創設者兼CEOのクリス・ニコルソンが語るように、囲碁を行うことのできるAIは、戦略が重要なゲームのように考えることのできるほとんどすべての問題に適用できる。これには金融取引や戦争を含む、と彼は言う。

金融取引にしても戦争にしても、AIに学ばせるためにはもっと多くの作業とデータが必要だ。しかし、そうしたコンセプトを耳にするだけでも不安になる。ボストロムはその著書で、AIは核兵器より危険かもしれないと述べている。AIは、人間が悪用できるというだけでなく、人間がコントロールできないAIシステムを構築しうるからだ。

AlphaGoのようなシステムでは、そんなAIをつくり出すことはできない。AlphaGoは単独で学び、(囲碁において)大部分の人間を上回ることができる。しかし、囲碁がいくら複雑といっても限られた宇宙だ。本物の宇宙ほど複雑なわけではない。だからディープマインドの研究者たちは、このシステムを完全に制御できると言う。彼らはシステムを自由に変えることができるし、シャットダウンすることもできる。この特殊なマシンを危険であると考えることは、まったくのナンセンスである。

本当の懸念は、研究者がAIシステムの改善を続けて、知らず知らずのうちに「世界の終末」が現実のものとなり始める境界線を越えてしまうことだ。ボストロムが言うには、彼を含む「Future of Humanity Institute」の人々は、リインフォースメント・ラーニングシステムが研究者の管理を逃れる方法を見つけられるかどうかを見ているという。
「より高度なシステムに起こる問題に似たものを、わたしたちはこのシステムにも見ることができます」と彼は言う。つまり、リインフォースメント・ラーニングシステムによって、マシンがシャットダウンされることに抵抗したことを示す兆しがあったのだ。

しかし、これらは非常に小さな兆しである。ボストロムは、そのような危険がやって来るとしてもまだ遠い先のことだと認めている。彼の努力やイーロン・マスクのような影響力のあるテクノロジストのおかげで、産業界は、その必要が生じるずっと前からAIの潜在的な危険性に気づいている。これらの懸念が示すのは、ディープマインドで開発中のこうしたテクノロジーが、ものすごく強力であるということだ。

グーグルの囲碁における勝利は、同じことを示している。しかしその勝利は、ほんの序曲にすぎない。3月にAlphaGoは、過去10年における世界最高の囲碁棋士イ・セドルに挑戦する。世界ランク5位のセドルは、AIに敗れた欧州チャンピオン、世界ランク633位のファン・フイよりかなり優秀だ。
多くの専門家は、このヘヴィー級の試合でもAlphaGoが勝つと考えている。もしそうなったとしても、それもほんの序曲である。

観戦速報・グーグルの囲碁AI「AlphaGo」が最強の棋士を破った日
グーグルの人工知能(AI)と、世界最強棋士のひとりとの5連戦。接戦となったその第1戦は、人がAIに敗れるという結果に終わった。2016年3月9日は、これからのAIを語るうえで重要な日となる。
かつてカスパロフ、そしていまイ・セドルの名前が、コンピューターに敗北を喫した人間の名前として歴史に刻まれることになった。
3月9日13時(日本時間)に始まった「Google DeepMind Challenge Match」の第1戦は、16時30分頃にイ・セドル九段が投了し、人工知能(AI)が人に勝利するという結果に終わった。
グーグルが2014年1月に買収した英国の“人工知能スタートアップ”DeepMind(ディープマインド)。彼らのテクノロジーが、何をもって革新的とされるのかを説明するのは、同社CEOのデミス・ハサビスらにインタヴューした『WIRED』VOL.20の特集記事に譲りたい。だが、この日DeepMindの囲碁プログラム「AlphaGo」(アルファ碁)が手にした勝利が、テクノロジーの歴史において大きなマイルストーンとなったことは、ここでしっかりと記しておきたい。
関連記事:「囲碁の謎」を解いたグーグルの超知能は、人工知能の進化を10年早めた(2016.1.31)
この勝利に向けられた人々の感情は、対局直後からソーシャルメディアに溢れている。そして、コンピューターと人が差し交わした一手一手についても、すでにして多くの解説がネット上に公開され始めている。
本記事では、ひとつだけ、本対局を振り返って記しておきたい。それは、AIは人らしく指したと同時に、AIだからこその打ち手も見せた、ということだ。
この日、『WIRED』日本版では、対局が中継されたYouTubeライヴストリーミングを、日本が誇るコンピューター囲碁研究に携わる研究者・開発者らとともに見届けた。

終局後の彼らとの対話の内容を抜き出してみよう。曰く、「DeepMindが打った手には『人であれば打たないだろう』と思えるものもあった」「その瞬間は、その手が有効だとは思えなかった」「しかし終わってみれば、それがあったからこそDeepMindは勝てたのかも知れない」「あるいは、勝敗とは関係ないのかも知れない」…。
AIは、人が盤上に見出せていない何かを見ているのかもしれない──。過剰な思い入れとも言われそうだが、その進化には期待せずにはいられない。
さて、戦いはまだ終わっていない。第2戦は3月10日(木)に行われる。そして、5回にわたって開催される決戦の詳細については、4月9日に発売となる雑誌『WIRED』VOL.22にてレポートをする予定なので、誌面をぜひご期待いただきたい。
(記事引用)
 
 

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