新しい経済成長の経路を探る
ビットコイン消滅も、送金コスト高騰問題の行方
HOME 政治・経済  野口悠紀雄 2017.11.23
野口悠紀雄:早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問   
 ビットコインの価格が8000ドルに近づいた。分岐したビットコインキャッシュの価格上昇率はもっと激しく、わずか3日間で価格が4倍以上に暴騰する事態も生じた。
値上がり期待の購入者は満足しているだろう。

 しかし、価格上昇は問題をもたらした。送金手数料が自動的に上がってしまったのだ。これはビットコインを送金に用いる際に大きな問題となる。

 ビットコインは、手数料上昇問題をどう解決するのだろうか?

分裂後も価格高騰で
手数料も上昇

 ビットコイン(ビットコインキャッシュについても同様)の送金手数料は、ビットコイン建てで決められている。

 したがって、ビットコインの価格が上昇したために、手数料は上昇した。

 例えば、取引所の一つ、ビットフライヤーの場合は0.0004BTCなので、仮に1BTC=80万円で計算すれば、320円となる。

 ところで、銀行の口座振替の手数料は、図表1に示す通りだ。

銀行の手数料と比較すれば分かるように、送金額が3万円未満の場合には、すでにビットコインは銀行の手数料より高くなってしまった。

 今後、ビットコイン価格がさらに上がると、手数料はさらに上がる。

 ビットコインのメリットとして、今年の初め頃までは、「極めて低い送金手数料で送金ができる」と言われていた。
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 確かにそうだったのだが、そのメリットが急速に失われようとしている。

 手数料が数百円になっても、送金金額が数十万円以上であれば、あまり大きな負担とは考えられないだろう。しかし、数千円程度未満の送金を行なうためには、かなり大きな負担になる。

 そして、ビットコインが本来、活躍すべきは、この程度の範囲の金額の送金だ。

 数年前には、ビットコインによって、マイクロペイメントが 可能になると考えられていた。これは、1円未満といったごく少額の送金だ。しかし、ビットコインの価格が現在のように上昇してしまっては、とてもマイクロペイメントなどできない。

 ビットコインは、送金に使って初めて価値あるものとなるのであって、持っているだけでは価値を生まない。

 だから、この問題をどのように解決するかが、ビットコインの今後を決めると言えよう。

優れた送金手段だが……
マイクロペイメントができない恐れ

 もちろん、送金にあたって問題となるのは、手数料だけではない。

 これまでの送金手段に比べて、ビットコインが以下の諸点で優れた特性を持っていることは間違いない。
(記事引用)